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Mirage-knight-cavalier01 
2006.05.28.Sun / 23:01 
「だからよぅ、オレは言ってやったのよ、チェンジ」
スペードのジャックとハートの8をテーブルの上に捨てて、配られたカードを開く。
「・・・・ッデム・・・」
「あぁ・・そのジャックがあれば・・gg」
「用があるなら幻影の砦に来いってよっ・・・もっかいチェンジだっ!」
投げるようにクラブの2とダイヤの5をテーブルに捨てる。
「ジャギよ・・主はなんでも看板かけすぎじゃ・・・わしは良い。コール」
「あぁ・・・そのクラブの2があればぁ・・・ggg」
「んだよー、仕方ねぇじゃん。オレここに住んでんだし。ってコールかよ・・・なんでたった5回のチェンジで手が揃うんだよ・・・」
「わしは3回しかチェンジしとたらんがの」
「おれはもうおっけー。かかってきなさい」
「海はポーカーフェイスなのに良い手が来るとロッキンチェアーを揺する癖を治すがよい・・・」
「ばっ!あいすんあいすん!そんな癖無いよ!作らないでよ!」
「わははっ!うーみー、次から勝負だぜーw」
「今回は?」
「うるせーっ」
「んん・・・・おれはどうすっかなぁ・・・やっぱチェンジ」
「はいはい」
海猿が捨てられたカードの枚数を横目で見て、同じだけのカードを配る。3枚。
「Vやんは手堅いよなぁ・・・ってポーカーで粘るのを手堅いっつーのかわかんねぇけど」
うあーっとソファーにもたれかかるジャギ。陽光が目にかかってまぶしい。自分の手もまぶしいばかりの・・・・ブタ。
「うしっ、これならいけそうな気がしてきた。」
ぱたりこ、とカードを伏せる。
「まぁジャギがブタだから最下位はなかろうて・・」
「ちょ、ばかっ!おれはすげーよ!?すげー手だからよっ!もっかいチェンジしろって。しろってーーーー」
言い始めと言い終わりでテンションが全然違った。もう諦めたのかもしれない。
窓際の陽だまりL字ソファでだべりながらのポーカー。
最下位のモノは上位すべての人間に10k支払いのペナルティ。
平和な休日の、暇潰し。
「じゃあみんなおkだね?チェンジなしだね?」
海猿が自分のカードを手に取る。カードを見た瞬間、やはりロッキンチェアーは揺れたかもしれない。
「あーいーよいーよ、ほれ」
ばららっとテーブルの上に手を晒す。・・・・・・やっぱりブタだった。
「ジャギぃ・・・オープンって言ってから手は出せよぉ・・・ったくしょうがないなぁ・・・オープ」
「ちょっと待った。」
「お?」
「ぬ?」
「うぇ?」
カードの開示を止めた者以外が変な声を出して挙動を止める。
それは・・・
「Vちゃん、どうかした?トイレ?」
陽だまりが一部だけ影になった場所にいた、ヴェルト。
「いや、ちょっと連絡が入ってね。すぐに出かけなきゃいかん」
今までソファと一体化していたジャギが元気に起き上がる。
「んだ?揉め事か?」
「主はそーゆーの好きじゃのぅ・・・」
アイスが呆れた目をジャギに投げかける。
「いんや、ぐんそーがね、お呼び」
右の人差し指でコメカミをトントンと叩きながら憂鬱極まりないといった感じのヴェルト。
さーっと顔色が白くなるモンクとチャンプ。
「そ・・・そりゃ急がないとねっ!」
「お・・・おおっ!やべーぜ!ぶっ殺されちまうっ!」
「いや殺しはせんじゃろう・・・さすがに・・・」
「甘いっ!」
「あめぇっ!」
海猿から後頭部を、ジャギから逆水平チョップを食らうアイス。
「ジャギやんいつものゆったげてっ!」
「おう聞きたいかおれの武勇伝っ!」
海猿とジャギの即興コントが始まっていた。
「V、官舎まで”飛ぶ”か?」
そのコントを見事にスルーしてアイスが尋ねてくる。
「あ、いや、ついでに買い物もするからさ。ありがとw」
陽だまりから身を引いて、出口に向く。
日陰の中からの陽だまりはまた一段と輝いて見えて。
コントをする海猿とジャギ。それを苦笑しながら見るアイス。
掛け替えの無い仲間達も、やっぱり輝いて見えた。その情景を、一枚の絵のように心に書きとめる。
そしてその絵に背を向けて、ヴェルトは部屋を出た。

「おい、そういやポーカーどうすんの」
コントから我に返ったジャギが自分のどうしようも無い手を見ながら言う。
「そのままにしておけば助かったものを・・・・阿呆じゃのぅ・・・」
「せっかくだからオープンしよっか。最下位はジャギで決定だしw」
「うるせーっ!あ、わかった!!Vやん逃げたんだ!!オレのブタよりも酷い手だったから!」
ジャギがテーブルを飛び越えてヴェルトの居た椅子まで飛ぶ。
「いやそれよりも酷い手って・・・」
「ふへへへへへっ!しっかり徴収してやっからなあああああああwwwww」
テーブルの上に伏せられていたカードを捲る。
エースのスリーカードだった。
「なんじゃこりゃああああああああああああああ!!!!!!!」



「おいてめぇ幻影のモンか?」
砦を出て直ぐ、変な男三人組に捕まる。
「へ?」
「てめぇ今この砦から出てきたろ?見てたんだぜ」
「おぅ、見てた見てた」
それはなんとも奇妙な三人組で、服装はなんか全身サイズオーバーなダボダボな感じ。
1人なんて作業着・・・とゆーかツナギだった。
ジャギかお前等。
「ここにジャギって馬鹿がいるだろ?おい」
胸倉を摑まれる。
「いやそりゃいるけども」
面倒だから抵抗もしないでおく。
「おれ達ぁそいつに用があるんだわ。ちっと呼んで来てくんね?」
ひょろ長い方が顔に凄みを(多分)利かせて顔を近付けてくる。
3人の胸には見たことも無いエンブレム。あー、これはあれか、さっき話してた奴等か。
「中に入って自分達で用件伝えればぁ?おれ急いでるし」
ぐっ、と体が持ち上がる。摑まれた胸倉が捻られた。
「許可無く砦に入ったら砦の防衛なんたらが作動すんだろぉ!?あぁ!?」
それは砦が無人の時だけだ。阿呆。
これで大体アタリが付いた。砦も取得した事がないような弱小ギルドのチンピラ。
これで間違い無さそうだ。ジャギの馬鹿。もうちょっとマシなのに喧嘩を売れよな・・。
「それは無人の時だけだからさぁ・・・」
さっきから捻られている胸倉が少し痛い。そのちくちくとした痛みが蓄積されて行き、なんだか勘に触る。
「面倒だなぁ・・・」
何より自分は急いでいる。先程の二人が言ったように殺される事は無いだろうが、それでもギルドマスターの機嫌は損なわれるだろう。
それはプラスでは無い。マイナスだ。
そのマイナスと、白昼砦の前に死体が三つ散らばる事による風評被害のマイナスを比べてみる。
・・・・前者だな。
ヴェルトはその二つを比べて、風評被害のマイナスを受ける事にした。
「・・・・・・」
3人から見えない位置でナイフを練成し、さぁこれからバラそうかと思った矢先に胸倉から手が離れた。
「やっぱりいい。自分達で声かけてくる」
今まで胸倉を掴んでいた男がすたすたと砦の中に入っていく。
「えー、ヤッていきましょーよー」
背の小さい男が後に続く。
ひょろ長い男だけがその場に残り、蛇を思わせる目で睨んできた。
「・・・・命拾いしたな」
そしてそう言って二人の後に続く。
練成したナイフを手の中で光に帰す。
どうやらチンピラも長生きする術は知っているらしい。


砦の塀伝いに歩いて騎士団官舎へ向かう。
幻影騎士団の砦は王都は王都でも街外れにある為、歩いて行くには少し距離がある挙句、道はあぜ道、商店の一つも無い。人通りすら滅多に無い。
あー、やっぱあいすんに飛ばしてもらえば良かったか。
なんて後悔し始めた頃、まだ遠く・・・でも真正面から声がかかる。
「ヴェールトさーん!こーんにーちわー!!」
「んー??」
頭の上で小さなモノが右に左に世話しなく揺れている。・・・・手を振っている?
「おー」
右手だけ挙げて挨拶。いや、誰かまだわかんないけども。
豆粒みたいだった人影がどんどん拡大されて、やっと判別がつくようになった。
「あー、お前かぁ」
目の前には、大きな木製のカートを引いて、少しずれたゴーグルを頭に載せた商人の少女。
「わからなくて手ー振ってたんですかっ」
よっこいしょっとカードの持ち手を地面に下ろして立ち止まる。
「いや普通見えないから・・・・お前目ぇいいんだなぁ」
確かに目は大きいような気がするが、目の大きさと視力は関係あっただろうか?
「ヴェルトさんの猫背は特徴ありますからーw」
いひひ、と笑ってカートを漁る。またいつものヤツだろうか。

いつだったか、そんな昔では無い頃にこの少女とは出会った。少女とは言っても言動が幼いだけで15歳らしいが。
幻影の砦の前で絡まれていたのを助けた・・・・事になるのかなぁアレ・・・・。
『おぜうさん、一緒にお茶でもいかがですグハァ!?』
砦に帰り着くなり見つけた商人の女の子をいきなり口説き出した無影の脇腹を蹴っ飛ばす。
「ったく・・・・もう性別が女ならなんでもいいのかあんたは・・・」
商人の少女は口をぱくぱくさせている。まぁ・・・おれでもすると思うが。
見れば、頭に装備したゴーグルが少しズレている。
気になったので直してやった。
「なぁ嬢ちゃん、ここは人通りも少ないしこんな女ならなんでも良いって変態もいる。しかも砦の中にはまだペド狂人のわらびーってのがいて・・」
「ショバ代でありますっ!さー!」
さっと機敏に差し出された少女の両手の上に赤ポーションが一個。
ヴェルト:赤ポーション一個獲得。
「話は聞こうな?」
「苦手でありますっ!さー!」
聞いちゃいねぇ。
「まぁほら・・・危ないからさ・・・」
「はっ!大丈夫でありますっ!危なくなったらこの・・・斧・・・でっ・・・・」
カートから斧を両手で引きずり出・・・・せてなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
ガゴンッ!
中途半端に引きずり出された斧がカートから落ちる。
「Σ」
そっちの方が危なかった。
「この斧で一撃でありますっ!さー!」
地面にめり込んだ斧を指差してぴっと敬礼。
持ち主が一撃そうだった。
「・・・はぁ・・・」
めり込んだ斧を片手で引き抜いてカートに載せてやる。
そのまま何も言わずに砦に。
「あ、あのーっ!ここで商売しても・・・・・?」
背後から声がかかる。
右のポケットに違和感。探ってみると、いつもの癖でねじ込んでいた赤ポーションが一つ。
「ショバ代もらっちまったしなぁ・・・・勝手にしなさい・・・」
「あ・・・・ありがとうございますっ!さー!」
きっとまた敬礼でもしているんだろうと思う。またゴーグルをずらして。
振り返らず、右手だけあげて砦に入った。


「はいっ!今回のショバ代であります!さー!」
ぴっと差し出される少女の手の上に赤ポーションが一個。
ヴェルト:赤ポーション一個獲得。
「はぁ・・・まぁ・・・・・」
商品用のモノだろうか。赤ポーションの瓶はピカピカに磨かれていて、顔が写るくらいだった。
「なぁ・・・ここで商売して・・・・儲かるの?」
見渡せど見渡せど周りは荒野。王都プロンテラの僻地。人通りもやっぱり殆ど無い。
「人が一杯いても買ってくれなきゃ意味ないですもん」
「ここじゃ売れるっての?」
少女は、にひひ、と笑って。
「企業秘密ですのだ!」
ぴっと人差し指を立てる。
「でもヴェルトさんは私にとっては兄貴分であり強面のにいちゃんなので特別に教えてあげますのだっ!」
「誰が強面か・・・」
そして兄貴でも無い。
「にひひ、実はですね・・たまに幻影さんの砦にはお客さんが来るですのだ」
「お客?」
そんな上品なモノは来ない。そーゆーのは軍曹が騎士団官舎で迎える事になっているからだ。
「ちょっと怖い・・・ヴェルトさんよりももうちょっと怖い感じの人達がたまにくるですのだ」
ぴっこーん。
さっきの三人組が思い浮かぶ。ってちょっと待て・・・
「おれ・・・そんなに怖い顔してるか・・・・?」
「その人達がぞろぞろーって砦に入って行ったらですねぇ・・・」
スルーされた!!
「すぐに”しゃらくせえええええええ!!!”って声がして、大怪我して砦から出てくるですのだっ!」
「ははーん・・・そいつらに薬を売ってやる、と?」
こっくんこっくん。
「お陰で今はほらっ!」
がばぁっとカートにかかっていた布を引き剥がす。そこには・・・
「おおおおっ!?カート一杯に白ポーション!?」
かなりの数ががちゃがちゃとひしめいている。
「ギッてきた?」
右手の人差し指を鉤状にまげて見せる。
「とうっ(はーと)」
ずびしっ!ちいさな正拳が鳩尾に決まった!
「正中線をポンポン殴ってはいけな・・い・・・」
急所だから・・ね・・・。
「買いました!ちゃんと仕入れたですのだっ!さー!」
ぴっと敬礼をする。
「ふむぅ・・・」
これだけの数を仕入れるのは、今までの少女の財布からは考えられない。
どうやらジャギの迷惑も、この少女のためにはなっているようだった。
耳を澄ますと、遠くで
”しゃらくせええええええええ!!!!”
と謎の雄叫び。
きっと今頃さっきのチンピラが大怪我をして砦の前に逃げ出した頃だろう。
「泣いてるんですか?」
少女が見上げてくる。
「泣くかっ!」
びしっとゴーグルにチョップ。なんか・・・柔らかかった。
「いてててて」
精錬0のゴーグルだった。
「精錬くらいしようよ・・・・」
「そんなお金は無いのだ!です!」
「言い直さなくていいから・・・」
涙目で睨んでいた目が(そんな痛かったか?)ふと素に戻る。
「はっ!?」
ばばっとカートに布を被せ、カートの持ち手を地面から引き上げる。
「ん?どした?」
「ヴェルトさんと遊んでいる暇は無かったです!商売チャンスでしたのだ!」
ぎぎぎ・・・・とゆっくりカートの車輪が回りだす。ゆっくり・・・・ゆっくり・・・・ゆっくりすぎないか!?
「あの・・・・もうちょっとスピードUPしないと・・・間に合わなくね?」
「ガンバっでまずよおおおおおおお!!!」
歯を食いしばってカートを引いていた。
重量過多。思いっきり、引けてなかった。
さっきのジャギの雄叫びから、すでに少し経っている。この道を逃げかえってきているならもうそろそろ見えて来てもいい頃合だ。
なのに見えて来ないって事は・・・・別の道を逃げたか。
何も王都までの道は一本では無い。
なら、怪我人と少女が接触する機会は失われた事になる。
そして、砦から怪我人が転がり出るのはそう多くないはず。
つまり今日はもう・・・空振り。
目の前には歯を食いしばって重いカートを引く商人の少女。
さっきのジャギの雄叫びは、訓練されていない者の耳ではこの位置では聞こえない。
「はぁあ・・・」
溜息。
「なんでずがああああ?」
「お前本当に女の子なんだろうな・・・」
ひょいとカートの持ち手を取る。
「お?」
「ちょっと王都まで行くから付き合え」
ガラガラと事もなげにカートを片手で引く。
「えええええ!?商売チャンスが!さっきみかけた強面のにいちゃん達が!!」
持ち手を離さないから、ズルズルと少女ごとカートを引いてしまう。
邪魔だなぁ。
ひょいと襟を掴んでカートの上に載せてやる。
「ほ?」
「あいつらもう帰ったからな。ほら、王都でアイス食わしてやるから。」
「・・・・・シングル?」
「・・・・トリプルでもクワドロプルでもいーよ好きにしろっ!」
「GOGO兄貴ぃー!」
物凄い扱い易かった!
カートの上ではしゃぐ少女の頭・・・ゴーグルがまたズレている。
空いた手で直してやった。
「兄貴じゃねぇっての・・・・」
「♪?」
「ほんとに話きかねぇのなぁ・・・」
変な子連れ狼が、王都に向かう。



『この間の”仕事”ご苦労様』
騎士団官舎内に設けられた”幻影騎士団出張所”と呼ばれる一室でその男と向かいあう。
存在感だけで押しつぶされそうな、そんなエーテルの圧力をたった一人で放つのは”軍曹”・・・幻影騎士団・団長iwaokun
『お陰でオレも随分動きやすくなったでな』
朗らかに笑う。一般人が見れば、子供のように無邪気な笑顔に見えるだろう。しかしそれ故に恐ろしかった。
「は・・・・して、今日はどのような?」
目の前にはまだ湯気を放つコーヒー。しかし、飲む気は起こらない。
どうも軍曹を目の前にすると食欲や渇きは起こらない。ただ、何事も起こらなければいいと願うだけ。
軍曹は、一つ溜息をついて眼鏡を外し机の上に置く。
『今回も”仕事”だで』
一枚の無地の封筒を机の上に置く。
手に取り、その中を見た。
一枚の写真が出てくる。
『その女の名前はオルガ。オルガ=エテー。』
金髪の中年女性。皺がそろそろ気になる年頃か。
『容疑は王都転覆計画作成。”仕事内容”は・・・その一家の暗殺』
オルガと呼ばれた女性の写真の下からもう一枚の写真が滑り落ちる。
床に落ちたその写真に写っていたのは・・・・・。

『後味の悪い”仕事”だけどもな、どうか頼むで』
そう言われた言葉がぼやけて思い出される。
自分はなんと言って退室しただろうか。覚えていない。
ぼぅ、としたまま騎士団官舎の廊下を出口に向かって進む。
”殺し”の依頼を受けたのがショックなのでは無い。むしろそれは全然関係が無い。
自分は半ばそれを食事の種として生きてきたのだから。
暗殺奇襲闇討ち毒殺射殺諜報工作。
それが人生のほぼすべてだったのだから。
だからその事柄自体は問題では無い。
息をするように殺してきたのだ。
息をするように捨ててきたのだ。
でも・・・・さっきの写真は・・・・・。
「・・・・ると・・・・ん・・・!」
遠くから声がする。
「ヴェ・・・さー・・・・!」
なんだかもう何時間も聞いてないような。
「ヴェル・・・・ん!!」
何日も聞いてないような。
「ヴェルトさん!早く!」
少女が騎士団の門番に挟まれて、溶けそうなアイスを持って叫んでいた。
「とけるーっ!!」



「うまうま♪うまーっ!こっこのストロベリーのぷちぷち感が!感がっ!!!」
ほんのり赤みを帯びた西日を受けながら、少女と二人石階段に腰掛けてアイスを舐める。
オレのはほとんど溶けかけていたが・・・・。
「オレは後で自分で買うって言ったろ・・・・」
「むぐーっ!チョコが!この滑らかなチョコがああっ!!!」
全然聞いちゃいなかった。
「・・・・だって・・・・アイス屋さん移動するって・・・・」
むー、とアイスを睨みながら呟く。まったく聞いて無い訳でも無かったらしい。
「かっ・・・・そんなの後で探せばいいだろ・・・・」
猫背を丸めて滴りそうなアイスだけを舐め取る。
「ミントの爽やか!これっ!爽やか!」
「何段食ってんだよっ!」
じじゃーん!と目の前にアイスの柱。
「フィフス(五段)」
「ばかwwwwwww」
もうなんか遣る瀬無い気持ちになってきた。
見るとまたゴーグルがズレている。鼻にアイスもついていた。
「ったく・・・しょーがないなぁ・・・」
ズレを直し、アイスを指の腹でふき取ってやる。
「う?」
「ほれ、ガキじゃねぇんだから。」
ゴーグルを直して、ポンポンと頭を叩く。
「お?ありがとうっ兄貴っ!」 『ありがとう、お兄ちゃん』

「・・・・・・・・」
あいつは、盗賊だった。商人なんかじゃない。
元気一杯な所も、大きな目も、すぐにズレるゴーグルも似ているけれど。
あいつじゃ、ない。

「お?惚れましたかっ!さー!」
アイス片手にぴっと敬礼する。
「・・・・・・馬鹿。もう暗くなるからさ。帰るぞ」
パンパンと尻を叩きながら石階段から腰を上げる。
「しっ・・しかしアイスがっ」
「カートの上で食えっ!」
襟首を掴んでひょいとカートの上に載せる。
「楽々であります!さー!」
「このカートはお前のだからな・・・・」
敬礼した時に零れたアイスの雫を指して言う。
「あぁ!?カートが!カートがああ!!」
「ほら、目を離すとアイスが零れるぞ」
「わーっ!アイスアイス!」
「カートが・・・」
「かーとおおおおおお」
「わははwお前ほんとに15歳だろうなwwww」
「立派なレディでございます!さー!」
「あ、アイスとカートが・・・」
「ああああああアイスカートおおおおお!!」
「なにそれwwwwwwwwwwww」
変な子連れ狼は、夕日を背に笑いながら街中に消えた。


とっぷりと日が暮れた頃、やっと家についた。
「今日は送ってもらってありがとうございましたっ!あ・・・あとアイスも・・・・」
「アイスメインだったろう・・・・大量に食いやがって・・・・」
お陰で財布が軽くなった。だいぶ。
「まぁ・・・ほら!年頃でございますからっ!」
あははwと笑う。くそ、関係ねぇだろうが・・・・。
「太ってしまえ・・・・」
「なんですとぉ!?」
ポツリとつぶやいた言葉がどうやら聞こえてしまったようだ。シット。
「まぁほら・・・日が暮れてからは外出すんなよ?」
「大丈夫でありますっ!危なくなったらこの・・・斧・・・でっ・・・」
「いやそのネタはもういいからw」
またいつの間にかズレたゴーグルを直してやる。
「夜になると・・・・殺人鬼が徘徊してるらしいからな・・・」
自嘲気味にはなってないだろうか?
心配だった。
「こっ・・・怖いですなそりゃぁ・・・」
「だからほら、家に入ってじっとしてろ」
家のドアを開けてやる。カートはさっき納屋にしまった。
「なにからなにまですまねぇ兄貴ぃ・・・」
「(どこのちんぴらだ・・・)・・・まぁいい、またな、サリサ」
「ほ?なんで兄貴が私の名前を知っているですのだ?」
「え」
「私は名乗った覚えがないですお?」
「えええ?」
しまった。ついつい名前を言ってしまった。
なんとかして誤魔化さないと・・・・色々と支障を来たす。そう、『色々と』
「あやしい・・・・まさか・・・・兄貴っ!」
「はっ!はいっ!」
びしっと指を指され、ついつい気をつけ。
「私のラヴリー光線にやられ「違うからな」
迎撃に1秒かからなかった。
「ばきゅーんっ!ばきゅーんっ!」
何かを撃ち抜いているらしい。まさかおれのハートではなかろうが。
「しかしあやしい・・・・」
まだ疑っている。なんだかさっきの遣り取りのせいで、すっかり誤魔化す気が失せてしまったのだが・・・・。
ほっといても問題なさそう・・・みたいな?ま、でもケジメはちゃんとつけないとな。
「ほら、あれだ。お前さっき自分で言ってたじゃんか」
「へ?さっき?」
「カートの上でよ、”サリサのアイスがあああ!!!”って大声で」
「う・・・嘘だっ!私は自分の名前を自分で言っちゃうような事は・・・・無い・・・とも・・・言い切れない事も無いが無いように勤めて早3年・・・ですのだっ!」
「あるんじゃねぇかw」
「みなさーんっ!此処に今流行りの殺人鬼が・・」
「ぎゃー!」
まじやべー。
口を塞いで、なんとか黙らせる。
「まぁほれ、おれはもう帰るから・・・・」
「おうっ!帰れ帰れっ!」
塩を投げられそうな勢いだった。
「じゃあな・・・・おやすみ。サリサ」
「まったねーっ!おやすみ、兄貴っ!」
暖かい何かに背を向けて街灯も無い道に足を向ける。
ったくあのガキ・・・・兄貴じゃねぇってのに・・・・。
なんとなく、まだ見送られているような気がして、振り返らずに右手を挙げた。
左手には写真。
国家転覆を計画したとされる女性。オルガ=エテー。
その下には、そのオルガの娘、サリサ=エテーの写真。
『”仕事内容”は・・・その一家の暗殺』
軍曹の重厚な声を思い出し、それを噛み殺して夜道を歩いた。




「あら、ノム君はお仕事?」
カチャカチャとナイフとフォークが動く音。
砦に帰ったらすぐに晩飯だった。
「ん、なんか倒しに出かけてるらしいよ。”羽”の人達と。あ、バージル君しょうゆ取ってー」
「ほいほい、ってこれソースか。しょうゆしょうゆ・・・」
「あぁごめ、おれが使ってそのままだった」
「もー、わらびー。ちゃんと使ったら戻すー」
「ごめごめw」
「うっわー・・・にれちゃんが凄い器用な事してるぞ・・」
「?(・ω・)”」
「ハンバーグ残してキャベツだけ食べてるwwwww」
「淑女の 嗜み (・ω・)”」
「ダイエットってーんじゃ・・・」
幻影騎士団のリビングは広い。まぁ、一つの砦の中にある部屋でいえば、2Fの大広間の次に広い。
その真ん中にある長テーブルには今は空席が目立つ。
”羽”と呼ばれた人達がごっそりいないからだ。
”斑鳩の羽”
裏幻影と呼ばれる人外魔境。正式なメンバー数は、”斑鳩の羽”の一枚目、御影司しか知らないのかもしれない。
幻影騎士団において、主力ともいえるメンツで構成されている。
それが、ごっそりといなかった。
今食卓についているのは
ヴェルト・のりちゃん・バージル・士蕨・ニレコの五人だけ。
食事が終わると、のりちゃん手製のプリンが配られ、お茶と会話を楽しんで解散となった。


自室に入って直ぐの所にある部屋の電源を入れようとして辞める。
扉を閉め、真っ暗な部屋の中を手探りで机まで歩く。
左手人差し指に硬い感触。
机を探し出したら次はテーブルライトのボタン。すぐに発見し、スイッチを入れる。
小さめの明かりが心もとなそうに部屋をぼんやりと照らした。
「・・・・・ふぅー・・・・」
どっか、と椅子に腰掛け背凭れに体重を預け、溜息。
左手を上着のポケットに突っ込んで中身を引っ張り出し、そのまま机の上に投げた。
写真が二枚と指示書が一枚。
金髪の中年女性は、いつみてもいかめしい顔をしている。
その下、亜麻色の髪をした目の大きな少女は、ぼんやりとしたライトの下でもやっぱり笑っていた。
左手で写真を引き寄せ、目の前にかざす。
どこを見ているのだろう、この目は。
何かおもしろいモノでも見つけたのかもしれない。
あのガキは好奇心だけは人一倍だから。
写真の中の目は、薄闇を照らすライトよりも輝いて見えた。
「・・・ったく・・・殺されそうだってーのに・・・・」
自然と口元が緩む。
机の一番下の棚、唯一鍵がかかっている其処をいつもの手順(鍵穴はフェイク、真の鍵穴は机の下)で開け、中にあるただ一つのモノを取り出す。
そして、机の上にあるサリサの写真に並べた。
その写真は、所々縁が破れ、皺になった箇所も一箇所や二箇所では済んでいないような。
そんな、痛んだ写真。
被写体は女性。いや、少女。
サリサに負けないくらいの大きな目を、これまたサリサに負けないくらい輝かせている。
「サーカスだったよなぁ・・・入る前に撮ったんだっけ・・・・」
そう、サーカスに入ってからは写真が撮れない事に気がつき、とりあえず外で一枚だけ撮った写真。
全部捨ててしまった過去の中で、唯一捨て切れなかった、たった一つのモノ。
唯一の・・・・妹の記録。
ヴェルトの妹は、今もヴェルトの記憶の中だけで元気に走り回り、きらきらと笑う。そう、頭の中だけで。
机の上、薄闇に守られるようにぼんやり照らされた二枚の写真。
良く考えなかった。
良く考えれば、絶対出来ない事だから。
だから、その時の気持ちだけで・・・・ヴェルトは肩のエンブレムを外した。


皮製のボストンバッグを肩に提げ、部屋を後にする。
机の上に置かれたエンブレムがどこか寂しそうだった。
時間は早朝5:00
砦の中はまだ静かで、あと20分もすればバージル君が起きて朝食の用意を始めるだろう。
ちょっと惜しい気もする。彼の作る料理は例外無く美味だったから。
そんな事を思う頭を軽く振って、部屋から一階に。
長い縁側を抜けて、そのまま玄関に。
そこに、彼女は居た。なんの気配もさせず。
玄関マットにそのまばゆい銀髪を垂らして。
「・・・」
日が昇り始め、その顔を照らし始める。
のりちゃんは
「寝てるよっ!」
玄関で座ったまま寝ていた。
「寝相が悪いとか良いとかの問題じゃない・・・」
朝からぶっ飛ばしてくれる仲間だった。
せっかく気持ち良さそうに寝ているので、起こさないでおく。(バージル君もびびるだろう)
こっそりと靴を出して履く。
玄関の扉に手をかけたとき
「行くの?」
眠たそうな声が背中にかかる。
「ん・・・仕事早くってさ・・・」
顔を見られたら、気持ちがバレてしまうと思った。
だから、振り返らず。
「そう・・・・あのさ・・・・」
まだ眠そうな声。でも、意識がはっきりと宿った・・・そんな声。
「辛かったら・・・・戻っておいで?」
寝ぼけているのだと、そう思う事にした。
たとえ、彼女が心を透かして見る事ができたとしても。
「うん・・・・そうするよ」
結局最後まで振り返らず、扉を開けた。
二度と戻らないつもりで。


「はっ・・・はっ・・・はっ・・・・」
ズレ落ちるボストンバッグを忌々しげに肩に掛けなおしながら走る。
早朝でも人目を避け、裏路地を。
右に行ったり左に行ったり、時に急停止したりUターンしたりしながら。
無いとは思う。自身の経験からも、つけられている感じは無い。
しかし、今追跡がかかるとしたらそれは幻影騎士団。
やり過ぎてやり過ぎる事は無いと思った。
だから、また一つ無駄な角を曲がる。

結局、サリサの家の前に着いたのは砦を出てからきっちり一時間後。
みっちりしっかり道筋をバラバラにしてから、ここにたどり着いた。
サリサの家。昨夜は夜だったからあまり気にならなかったが、朝日を受けるとこれまた一段と・・・
「ボロい・・・・」
ボロかった。
しかも半端なく。どう見ても天井あたりが凹んでいるとしか思えない。
廃屋と言われても仕方の無いような・・・そんなボロ家。
レンガと木でできた、震度3の地震で崩れてなくなりそうな・・・そんなボロ家。
貧乏だろうとは思っていた。
父親はおらず、母親は国家転覆計画を画策中。働いていたとしても、その給料は反王都組織に吸い上げられてしまうだろう。
だからサリサはがんばっていた。おしゃれもせず、小さな手をガサガサにして。
汗水垂らしてカートを引いていた。歯を食いしばって。
そんながんばっているのに、大人は彼女を殺そうとする。
母親のせいで。
ずっと気になっていた肩の軽さが気にならなくなった。
やはり、自分はこうしてよかった。
サリサを殺すなんて・・・・・しなくて良かった。
安堵と共にノックをする。
さぁ、大逃亡の始まりだ。

「はーいっ!」
ボロ家の中から声がして、扉に向かってパタパタと走り寄る音。
朝からテンションの高いヤツだろうとは思っていたが・・・どうやらマジらしい。
ぎぃ、と扉が半分開く。
中から現れた少女に一瞬だけ目を奪われる。
そのエプロン姿

「・・・・・・・」

「おう兄貴っ!おはよーですのだっ!」
「・・・・おう」
あまりにもその姿が、あいつに似ていて。
だから、気の利いた事が言えずに詰まってしまった。
「兄貴ぃ丁度良いとこに来ましたですよっ!丁度朝ごはんが完成しましたっ!さー!」
ぴっと敬礼する。何か違和感。
「あん?おれ今日来るって言ったっけか?」
「もーっ!兄貴の目がやらしいっ!!エプロン姿に惚れおって!!」
聞いちゃいなかった。
「まぁ・・いつもの事か・・・」
「さぁ食えっ!食うです!のだ!」
「言い直した方が間違ってるからな・・・それに走って来たから食欲ねぇ・・・」
ぎぃぃと扉が開き始める。少しづつ、ボロ家の中に朝日が入る。
「えーっ!?せっかく・・・」
椅子の足が見える前、その前に何かが見える。黒い・・・・
「兄貴の友達も手伝ってくれたのにっ!」
靴の先。
「いよーぅ、おはようさん」
その椅子には、まめまめが座っていた。

「っ・・・・・・・・・」
適当に伸ばされた青みがかった黒髪。切れ長で少し垂れた目。黒いスーツをだらしなく着て、いつもノーネクタイ。
目を引く左目下にあしらわれた、涙のタトゥー。
今というタイミングで、もっとも会いたく無い人物。幻影騎士団でもっとも反旗に近い男。
その男が、サリサの家のダイニングで椅子にだらしなく座り、くつろいでいる。
右手にナイフを持ち、左手に林檎を持って。
「いやー眠いんだけどね。さっき軍曹から連絡があってさ」
「・・・・・・・」
「至急様子を見て来いってーからさ、仕方なくね。まぁほら、この子、筋いいぜ。スープとかめちゃウマなはず」
「だっしょ!?兄貴っ!見る目のある友達持ったなっ!なんか雰囲気がやらしいけどなっ!」
「へらず口もたまんねぇなぁ・・・・・おい」
「・・・・・・・・」
「朝食のデザートはこの娘っ子にすっか!はははははっ!!!」
「まめええええええええ!!!」
咄嗟に右手で練成した四本のナイフを投げつける。同時にサリサの腕を掴み、家の外に放り出した。
「おわーっ!?」
「はいはいっと」
狙い違わず四本のナイフはまめまめの眉間に吸い込まれるように飛び、眉間の前に持ち出された林檎に全部突き刺さる。
「あらー、こりゃあ軍曹の言ってた事はマジなんかね?」
一瞬で針鼠になった林檎をぼーっと眺めながら、呟く。
次に投げるナイフを左手で練成。投擲に備えつつ、接近戦が可能なように右手でもナイフを握る。
「まぁ待てって。おれぁ今はやる気ないからさ」
ぱっと両手を開き、ナイフと林檎を床に落とす。林檎は、落ちた衝撃で粉々になった。
「・・・・・・・・」
警戒は解かない。神経を研ぎ澄まし、見えないモノも見えるように目を凝らす。聞こえない事でも聞こえるように耳を澄ます。
『兄貴ーっ!喧嘩はダメだっ!わんぱくでも喧嘩はしちゃだめーっ!!』
アホの声が聞こえた。
「あはははははwおもれーなーあいつw」
「っ・・・・・・」
『垂れ目ーっ!兄貴に手ぇだすなよあちょーっ!』
「・・・・・おもれーな・・・・w」
なんだその為は。
「まぁほら、マジで手ぇ出さないからよ。これ食わしてよ」
油断しないように注意しながら、目線を机の上に。
そこにはまだ湯気が立つスープが一皿。
「こーゆーのオレダメなんだわ。ケジメつけないとな。」
スッと動いた左手に反応して、こっちの左手も動く。
「せっかく作ったからな。ちゃんと食ってやんねぇと」
動いた左手は、スプーンを取っただけだった。
一掬いして、スプーンを口に運ぶ。
「ん~激ウマ。さすがオレ様。最高。」
幻影騎士団最悪の男は、スープ一口に感動していた。
『ああああ!?私のっ!私のすーぷうううううううう!!!!』
アホが扉の外で騒がしい。
「・・・・・・・・・」
油断だけはしないで、ずっと構えを解かない。
「とゆー訳で、Vちゃん追っかけるのはこれ食ってからにするわ」
ずずーっとスープを啜る。
「は?」
ついつい素になってしまった。
「いやだからさ、これ食ってから追っかけるから。それまで逃げてていいよ」
また一口啜る。
じり、とあからさまに一歩後退り。まめまめは動かない。
「あーあ、これ食わないなんて勿体無い。ちょーうまいのに」
ずずーーっと一口。
それを見て、扉を後ろ手で開け、飛び出した。
部屋の中には、残されたまめまめが1人スープを啜る。
「どうせ死ぬなら、これ飲んで死ねばいいのに」


「うおおおおっ!?今朝はまた一段とハッスルっね兄貴っ!!」
右手一本でカート+サリサを引いて走る。
バレた。
自分の裏切りが、もうバレたのだ。
もう少し時間がかかると思ったのに、さすが幻影騎士団。
「おおおおおっ!ちょっと早すぎませんか兄上ええええええ!!!」
こうなってしまっては出来るだけ早くこの街から出るしか無い。
昨夜砦にいたメンバーには見つかる事は無い。
彼等にはその手の力が無いからだ。
だがしかし、他は違う。
裏幻影。”斑鳩の羽”は。
ヤツらは索敵と殲滅を専門とした幻影最強の猟犬。
司の瞳、ノム3の目、海猿の精霊探査、これら全部を同時に欺くのは不可能。
そして、アイスの力。
座標さえバレれば、即座に人間が飛んでくる。逃亡は不可能。
だから、連中が戻ってくるよりも先にこの街を出る。それが至上目的。
「吐きますよ兄者あああああああああああ!?」
そろそろ煩くなってきたので足を止める。
サリサはカートの上、肩で息をしていた。
「兄貴・・・・あんたっ・・・超・・・ぐれーとっ!!」
びっと親指を上げる。
褒められたのでもう少し走る事にした。
「違うよぅうわああああああああっっ!!!」
違ったらしいので止まる。
サリサは未だ肩で息をしている。
「兄貴っ・・・あんた・・・かっこいいっ!!」
褒められたのでry
コントが終わったにはそれから15分後だった。

「うぇ?なんで私が狙われる事に?」
カラカラとカートを引く。どうやら先程の速度だとサリサには辛いらしい。
「・・・・・さーな、わからん」
本当は知っているのだ。お前の母親のせいだと。
だが、今それを知ってもどうにもならない。それに、その事実はこの笑顔と元気だけが取り柄の少女から何もかもを奪うように思えた。
「まっ!まさかっっ!私のラヴリー「違うからな」
いつものネタだった。
「ちぇーっ!ちぇーっ!兄貴もこのラヴリーに「やられてないからな」
ちょっと変化しただけだった。
「兄貴っ!アイスですよっ!」
「お前くじけないのなぁ・・・・」
がっくりと肩を落としながら財布を出す。結局勝てない。

ゆっくり座って食べる程命知らずでは無いので、残念ならが歩き食い。否、サリサだけはカートに乗っているので座り食い。
いや、普通に食ってる、でいいのか。
「そりゃ怖いけど・・・・・」
ふいにカートから声がかかる。
「でも・・・兄貴がいるか・・・ら・・・・・」
ちらと後を振り返ると、耳まで真っ赤にしたサリサがアイスのコーンをかじっている。
「恥ずかしいんなら言うなよな・・・・」
「兄貴も照れてるくせにっ!くせにっ!!」
確かに、今の顔はちょっと見せられない。
だから、前だけ向いてカートを引いた。

ゴーン、と鐘の音が聞こえる。王都プロンテラ中心にある正午の鐘。
もう随分と追ってを撒く歩方で街から離れたと思ったが、まだ正午だったらしい。
鐘の音もまだ近くから聞こえた。
「サリサー、昼だけど腹減ってねぇかー?」
歩き詰めで若干の疲労。声が少しダレてくる。
「兄貴ー、兄貴はヤクザもんだーっ」
カートで揺られているだけでも疲れるのだろう。サリサの元気も少し落ち着き気味。
「無茶な生活で時間間隔がズレてんだっ!昼って!昼って!!」
「あー?今正午の鐘が鳴ったろー?」
「兄貴・・・長い逃亡生活で耳まで・・・うぅぅっ!」
ヨヨヨ、と崩れ落ちる気配。見て無いのに細かいなぁ・・・じゃなくって。
なんだ?会話がかみ合って・・・まぁ・・・いつも噛みあってないけど・・・・。
「おいおい、サリサも聞いたろー?さっきの鐘の音。あれが正午の鐘だろー?」
確認。
「兄貴ー、正午の鐘はもう一時間前に聞いたよぅ。それに今は私のラヴリーカートの車輪の音しか・・」
愕然。
そして、再び鐘が鳴る。
ゴーンッ。
もの凄く近くで鳴った。そう、すぐそこの角を曲がった先の路地裏辺りから。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「うぃ?兄貴?」
サリサには聞こえていない。これは、特殊な訓練を積んだ者にしか聞こえない音だから。
角から人が現れる。ゆっくりとした足並みで。
その姿は、黒髪を目にかからないように切り、燦然と輝く目は金色で、黒いローブには赤い刺繍が施されている。
司祭。
燃えるような金色の目がこちらを射抜く。
司祭は、体の前で白手袋に包まれた両拳を打ち合わした。
ゴーーーーーーンッッッ。
「おおっ!司祭さmむぐーっ!!」
右の掌でサリサの口を塞ぐ。ヤバイ。彼には冗談は通じない。
それにしても・・・
「早かった・・・か?」
瞬きもせずに司祭が尋ねてくる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いつでも飛べるように足場を固める。
「裏切りの代償・・・・死を持って償えっ!!」
ゴッ。
風が司祭の前髪を跳ね上げる。そこに白いタトゥー・・・・聖紋と呼ばれるモノが見えた。
同じく打ち合わされていた両の手の甲にも違う聖紋が見える。
うっすらと服を貫通して、胸の間にも。ヘソの少し下にも見える。
御影司の最大出力攻撃。大反転・五重封殺。
「大!反!転!」
体の上に浮かび上がっていた聖紋が反転して地面に投影、固定される。
それは正しい五角形となって枠内にいるモノを高圧の聖属性で擦り潰す!!
かくして結界は完成された。が、しかし、それはあまりにも完成までに時間がかかり過ぎた。
動きの鈍いMOBや、固定された物体であるのならまだしも、こっちは娘っ子1人を抱えたとは言えチェイサー。
このくらい避けれないはずが無い。
カートをそのままにし(後で何を言われるかわからんが)ぼけっと突っ立っていたサリサを左脇に抱え後ろに跳躍。
その前に気がつけばよかった。
司がいるなら『彼』もいるだろうと。
飛び退りながら空中で左後方に殺気を感じる。
少し大き目のTシャツを着たスマックがそこにいた。
咄嗟にナイフで切りつけようとして、左腕がふさがっている事に気がつく。
空中で体を捻って右手のナイフで斬りつける。
その刃は、スマックの左手に握られてピクリとも動かなくなった。
「!?」
左足を後に引くスマック。自分の背後には・・・・ちょうど司の結界!
空中で蹴り飛ばして結界内に放り込むつもりなのだろう。
意図はわかった。しかし、片手はサリサを抱えていて、もう片手は刃物事万力のような力で止められている。
万事休す。
とりあえずサリサだけでも救おうと、もう一度空中で体を捻った時、それが零れた。ジーンズの左ポケットから。
「むっ・・・・・」
零れたそれ・・・・赤ポーションは奇跡のようにスマックの両目にかかり、その動きが一瞬止まる。
しかし、その一瞬で十分だった。
右手の剣を光に戻し、右手を開放。と同時にやっと地面に着地できた。
「スマーック!!」
結界維持の為に動けない司が叫ぶ。
攻守逆転したのだと思ったのだろう。しかし、オレは逃げた。
相打ちでは意味が無い。倒して、逃げ延びれなければ。
サリサを抱えたまま、街外れから街の中心に向けて走る。
背中にはぴったりと死の予感が張り付いてきている。スマックだろう。
左腕の中でサリサが何か言っている。
「胸っ!胸をツカンデマスヨ兄貴っ!!」
ほっておく事にした。緊張感の無いヤツめ。
「うう・・・もうお嫁にいけないっ!!」
行く気だったのか・・・・。

人込みの多い通りまで後少し、そう、距離にして50m。
そこまで行けば、先程のような大規模な結界も張れないし、大振な攻撃もできなくなる。
そうなればこっちのモノだ。隠れる逃げる身を潜めるは、チェイサーの十八番。
だが、世はそう甘く無し。
人込みを前にして、最後の障壁がふらりと現れた。・・・・2人セットで。
「このネクタイ長いような気がするんだけど・・・・」
「なんでも いい!(・ω・)”」
士蕨とニレコ。

「ありゃ?Vちゃんが誘拐犯だ」
「いよー(・ω・)ノ」
脱力系の2人だった。
「おおおっ!こーんにーちわーっ!ペド狂人とピンクっ!!」
俵のように左脇腹に抱えられたまま、サリサが挨拶する。
「おー、砦前で商売してる子だーって誰がペドか!」
狂人は否定しないらしい。
「だれがピンクかっヽ(゚∀゚)ノ」
「「いや、ニレコしかいないだろう」」
ハモってしまった。
「すまんわらびー、今ちょっと急いでるから・・・」
この2人に連絡が行ってなければ、ここはスルーできる。
わらびとニレコの間を縫うように走り抜けようとした時
「ニレコ!そいつを止めろっ!」
燃えるような金色の目がちょうど追いついてきた。
「あい(・ω・)」
右足のつま先に鋭い痛み。見ると、小さいローファーのかかとが突き刺さっていた。
「ぐっ・・・」
しかも痛みだけでは無い。足にまったく力が入らなくなってしまっていた。
「にれ・・・・・」
「?(・ω・)”」
足はどけてもらえなかった。
「あのさ・・・どうしたんよ・・・司ッp」
走るのを辞めて、ゆっくり歩いてくる司の前にわらびが割って入る。
司はさも面倒そうに
「そいつとそいつの抱えてるガキに抹殺指令が下った」
と吐き捨てるように行った。
「・・・・・軍曹から直接?」
「直接だ。疑うなら自分で確認しろ。」
どけ、と呟いて右腕でわらびを払いどける。
そして目の前に。
「今度こそ、塵芥になるまで磨り潰してやる」
ぼう、と左手の甲に聖紋が浮かぶ。どうやら、一つでもいいらしい。
足は未だにニレコに踏まれたまま。
ビッと布が裂ける音がした。
「?」
「貴様・・・・」
金色の瞳がゆっくりと背後に振り返る。破れた左手の白手袋を見せ付けるように掲げながら。

視線の先には、白い騎兵剣を持った士蕨。
「やっぱり・・・話くらいは聞かなきゃダメだよ・・・」
「邪魔を・・・するなああっ!!!」
両拳を握って御影が走り寄る。
間に割って入るニレコ。
「にれ・・・・貴様も邪魔をするか・・・」
食いしばった歯も割れよ、と歯軋りが鳴る。
「にれちゃん・・・悪い、バックアップ頼む。」
士蕨が盾まで作り出す。
「司君・・・わらびーの相手は この私だっ!(*`ω´*)」
「なんでっΣ」
ガビーン!
「なら邪魔しないで下がってろ!」
「邪魔は 司君!ヽ(`□´)ノ」
ローファーが御影の右太ももを蹴り抜く。
「ぐっ・・・」
スマックは腕組みをして成り行きを見守っている。
「おおおっ!すげーぜにれっゴァ!?」
「ほぅぁああぁぁぁヽ(゚∀゚)ノ」
同時に士蕨の胸も蹴り抜かれた。
チャンス到来。
この隙に抜け出せれば・・・・。
「はわわわわわ!?」
サリサは腕の中で目を回している。まぁ、ちょっと乱暴に扱いすぎたか・・な・・?
「貴様等纏めて塵にしてくれる!」
御影が両拳をぶつけ、ゴーンと鐘のような音が鳴り響く。
「できるか なヽ(゚∀゚)ノ」
「Vちゃんとりあえずこっちに!」
士蕨はそう言ってはくれるのだけれど・・・・どう考えてもそこが一番危なそうだった。
「・・・・わるいっ!」
人込みの通りからは離れてしまうが、一番手薄な路地裏を目指して駆け出す。
と、共に影が射した。
「!?」
「どぉっせええええええええ!!!!!」
ずがっどーんっ!!!!!!!
人が上から降ってくる。
着地点は、岩盤が割れ、大地がささくれ立った。
肩膝を着いた態勢からゆっくりと立ち上がる。
「あああああいってええええ!アイス!”何が座標はわかった”だよっ!x軸しか解ってねぇじゃねぇか!殺す気か!?」
電通しているつもりなのだろうが、ばっちりオープンで誤爆していたのは
「司・・・・拙いのが来た・・・・」
「ふん、ジャギか。」
ジャギだった。
スマックが腕組みを解いて駆け出す。
御影はニレコと士蕨に向かいあったまま。
ニレコは「かかって きなさいっヽ(゚∀゚)ノ」
「おぅ、Vやん。何してんどぅわぁっ!?」
颯爽と駆け寄ったスマックが右の正拳をジャギに繰り出す。
ジャギはそれを喋りながらいなして右腕に飛びつき、そのまま関節を極めようとして・・・・はずされた。
「ちっ・・・・」
「おいスマ!なんの冗談だこりゃあ!!」
「ふんっ!知れた事。ジャギ、貴様も幻影騎士団の端くれなら!その裏切り者を始末しろ!!」
御影が視線もくれずに状況を説明した。
「は?裏切り者?誰が?」
「ヴェルトだ!その左脇に抱えている小娘を始末するはずが逃亡させようとしている!!」
「小娘を始末うううう?」
ギヌロ、と目の前のスマックを睨む。
「・・・・・・・」
「おいそんな話は聞いてねぇなぁ・・・おいいい・・・・」
「iwaokun直々の指令だ。」
「き・・・聞いてねぇ・・なぁ・・・・」
心なしかジャギの足がガクガクと震えているように見える。
その足の震えを踏み殺すように、一歩地面を踏みつけ
「おいてめぇら!この喧嘩、おれがあずか「”富嶽貫通”」
その名の山にも穴を開けそうな一撃がジャギの腹を狙って打ち出される。
「・・・・・るわけねぇか・・・w」
その一撃を、白刃取りで受け止めるジャギ。
「ぬ・・・・・・・・・・」
2人は膠着した。
「ジャギやん!こっち!こっち助けてうわっあ」
士蕨がもうベコベコに歪んだ盾でニレコの蹴りを受け止める。
「っしゃああああっヽ(゚∀゚)ノ」
そのまま振り返り、御影にワン・ツー。
「っつぅ・・・・」
ブロックした御影の両腕、袖の部分から煙が立つ。マジか!?
取り合えず話が聞きたい士蕨。
取り合えず裏切り者を始末したいがその前に邪魔者も始末したい御影。
取り合えず士蕨に天誅を下したいが邪魔する者にも容赦しないニレコ。
取り合えず早くBOSSを狩りに行きたいスマック。
取り合えず喧嘩を止めたいジャギ。
「ほあああ・・・・皆さん忙しそうですなぁ・・・・」
「はっ!?」
やっと目の焦点があったらしいサリサの一言で目が覚める。
逃げ出すには絶好のチャンスだった。
こっそり気配だけを消して、路地裏から屋根に跳躍。
「きょわわわわわわっ!?」
「ばっ!せっかく人がっ!!」
慌ててサリサの口を塞ぐも、遅かった。
「待て!ヴェルト!!」
振り返った瞬間に、その顔の前に上げていた左腕ブロックにニレコの拳が着弾。
「ぐぅぅっ!」
「わらびを 始末させろヽ(゚∀゚)ノ」
「何を言っとるか貴様っ!」
「そ・・・そうだそうだわぁ!?」
「ぬ・・・・・ぐ・・・・・」
「この白刃・・・・解いて・・・たまる・・かぁ・・・」
言い合う御影とニレコと士蕨。
お互い拳を合わせたまま一歩も譲らないスマックとジャギ。
地上は混沌としていた。


「ほぅ・・・・」
屋根上から地上を見下ろす。
そこにはまだまだ混沌が犇いていた。
「みんな・・・悪いな」
「うぇぇぇえええええ」
サリサは今にも吐きそうだった。
ズン。
右脇腹に違和感。
「え?」
見ると、ナイフが
「っ・・・・ぐっ・・・・!」
振り返って跳躍。屋根の端まで飛び退る。
「ぃよーお!気ぃ抜いちゃダメじゃんか」
そこには、今朝も見た最悪の青髪が血の滴るナイフを持って笑っていた。
「ま・・・め・・・・・・」
「うんうん。幻影のプリンス、まめまめだぜ?キちゃったか!?あはははははははwwww」
両手を広げながら高笑い。嫌すぎた。
「あ・・・兄貴?どうした?」
左脇に抱えられたサリサには今の負傷は見えない。
丁度良かった。
「毒はどうせ解毒しちゃうしなぁ・・・・ブッスリやっちゃうのが一番なんだけど、いきなり命取るってのはつまんないからねぇ・・・」
べーっと長い舌を出して、そしてまた笑った。
「さぁぁぁて、朝の続きといこうよ。ハンデありだけどもなぁwww」
言いつつもナイフすら構えない。
「このっ!垂れ目っ!」
「・・・・嬢ちゃんは後でな・・・・・はははははははw」
ゆっくり歩み寄ってくるまめまめ。
黒のジャケットと、白いシャツを風になびかせて。
「・・・・・サリサ・・・・飛ぶぞ・・・・」
ぼそりと小声で呟く。
「え?」
それを返答とし、ヴェルトは二本のナイフをまめまめの眼前に投げつけた。
「芸が・・・・・ねぇよっ!」
その”全力では無い投擲”は当然のように”はじかれた”
今朝の対峙でなんとなく思っていた事ではあったけれど、それは当りだったようだ。
まめまめはぬるい攻撃は弾く。
それが信条なのか、ただ体を動かすのがダルイのかはわからないが、今回はそれに救われた。
ナイフは確かに弾かれた。が、弾くために振り上げた右腕と右手とついでにその手に握られたナイフが、一瞬だけまめまめの視界を奪う。
その一瞬をついて、屋根から地上に向けて跳躍。
もちろん、混沌としていた地上に戻るのでは無く、日の光も射さないような暗い路地裏に。
ナイフを弾いた一瞬の間に目の前から獲物が逃げた。
だが、この世界でこの能力者達を相手にして、姿を一瞬隠す事など意味がない。
エーテルの匂い。それは決して消すことができなかったから。
「はん・・・・意味ねぇなぁ・・・・」
ナイフを光に返して、つまらなさそうにまめまめは呟く。
そして、風に鼻を利かせた。
「・・・・・・・・」
信じられない事に、ヴェルトのエーテルはどこにも感じ取れなかった。


「はぁ・・・・はぁ・・・・・」
肩を路地裏の壁になぞるように当てて進む。
右の脇腹からは出血が続いていた。
「兄貴っ!もうっ!降ろしてよ!」
足をじたばたさせるサリサ。こっちは怪我してんだからそうはしゃいでくれるなよ・・・。
「だーめだ・・・。襲われた時に対処できなくなるからな」
「おっ!?襲うなんてっ!もう兄貴っ!」
「・・・・違うからな・・・」
真っ赤になったかわりにおとなしくなったサリサを見て、自然と口元が緩む。
が、脇腹に走る痛みでまた歯を食いしばった。
「兄貴・・・・怪我してんだろ・・・?」
「・・・・・・おう」
いつまでも隠しきれるとは思えなかったので正直に言っておく。
「・・・・カートさえあれば・・・・」
「・・・・・・・おう、悪かったな」
「そんなっ!兄貴を責めてる訳じゃ・・」
「・・・・・おう」
また無言になって歩く。路地裏を、はいずるように。
「兄貴っ!」
「・・・・・・・・」
「兄貴っっ!」
「・・・・・・・うん?」
なんだかぼーっとする。サリサ、声が小さくなったか?もっと大声で喋ってくれ・・・・いつもみたいに・・・・。
「ちょっと・・・・・休憩しよっ!」
「・・・・・・・・・・・・・あ?」
見れば、動かしていたはずの足は完全に止まっていた。


「じゃっじゃーんっ!」
大仰なアクションと共に、つけていたエプロンからホットサンドを取り出す。
「お前追われてる感覚0な・・・・」
追ってを撒くために取ってきた行動の全てが無意味のような気がしてきた。
細い細い路地裏の壁に背中を預けて、二人で座る。
ひょいと目の前にホットサンド。
「兄貴の分っ!」
「いらね・・・食欲ねぇわ・・・」
右脇腹に穴が開いているのだ。そんな状態で食欲があるなんてのは、中国の昔の武将だけだ。
「食えっ!!」
がぼっと口の中に突っ込まれる。
「ぶっwわかったわかった!」
このままだと顎を持たれて咀嚼まで手動でやらかしそうだった。
「食べないと・・・・きっと持たないから・・・・」
しゅんとした声。
そのテンションのギャップはなんとかならんのか・・・。
横を見ると、一生懸命ホットサンドをかじっているサリサ。そのゴーグルがまたズレていた。
「なぁ・・・・」
血で汚れていない左手でそのズレを直してやる。
「ぅん?」
「この街を出たら・・・・どうする・・・・?」
サリサの大きな目がかすれて見える。
しっかりしなければ。
「うーん・・・・やっぱり商売かなぁ・・・カート引いて」
「もうカート無いけどな・・・・」
「それは兄貴がまた買ってくれちゃったりなんかしてっ!」
「・・・・・しょうがないなぁ・・・・・」
「兄貴も仕入れとか付いて来てくんなきゃダメだからねっ!」
「おれもかよ・・・・」
「2人でっ!道具屋さん!」
「・・・・・あぁ・・・・・・・・」
そんな絵を想像してみる。容易く出来た。
おれがカートを引いて、サリサがそのカートの上で宣伝して。
見入りは少ないかもしれないけど、毎日三食はちゃんと食べれて。
ちょっと金が溜まったら、お店を借りたりなんかして。サリサに宣伝用のチラシを持たして配らせたり。
毎日仕入れや営業で大変だったり。
でも、そんな毎日を、昔は夢見てたのかも・・・なぁ・・・・。
「それでっ!落ち着いたら母さんに手紙をかくですのだっ!」
幸せな絵は、一瞬で消え去った。
すっかり忘れていたが、今回の”仕事”の第一目標は、オルガ=エテー。こいつの母親。
おれは手を下さなかったけれど・・・・きっと・・・・助からない。
「そう・・・・・だな・・・・・・・」
今は伝えない事にする。
次の街について、商売も安定して。
もっと心にゆとりが持てたなら、その時、話そう。
「おし・・・・・そろそろ行くか・・・・・」
「うん・・・・」
ずず、と背中を壁に預けたまま上体を持ち上げる。
ぐっ、と左肩が持たれた。
「?」
「うんしょ・・・・」
サリサが左脇に添う様に立つ。
「どうせっ・・・また担がれるんだからっ・・・にしし♪」
その拍子に、またゴーグルがずれる。
「ああ、悪いな・・・・×××・・・」
「え?兄貴・・・今なんて?」
ゴーグルを直して、サリサをまた左脇に抱える。
そう、サリサだ。
けれど、今はもうどっちでもよかった。
「兄貴じゃねぇ・・・・・”お兄ちゃん”だ・・・」
「このっ!シスコンっ!」
元気は出なかったが、脚はなんとか路地裏の外を目指した。
光の射す方向へ。


「はは・・・・やっぱり・・なぁ・・・」
路地裏から抜けた先は海。波止場と呼ばれる場所。
ここに係留された船を拝借して、この街から逃げようとしていた。
その海を背景に、1人の男が立っている。
そろそろ現れるとは思っていた。
きっと現れると思っていた。
御影やスマックを見た時に、この瞬間は覚悟していた。
戦争と言う名の、闘争と言う名の、殺戮と言う名の、ゲーム。
その盤上の・・・・ACE。
「ちょっ!あにっ!」
「預かるよ。」
耳元で呟きが聞こえ、左脇が軽くなる。
腕の中にサリサを抱え、スーツに身を包んだ海猿が立っていた。
左脇が軽い。
サリサは意識を失ったのか・・・・目を閉じたまま。
「大丈夫、気を失っているだけだから。」
海風が前髪を揺らし、頬を撫でる。海猿の表情はどこまでも優しかった。
「な・・なぁ海ちゃん・・・こいつ・・関係ねぇんだよ・・・こいつは・・・・死ぬ事無いんだ・・・なぁ・・・悪いのはこいつの母親なんだよ・・・こいつは関係ねぇんだよ!なぁ!海ちゃん!」
海猿は少しだけ悲しそうに目を伏せ、盤上のACEに目をやる。
「・・・・・・・・・・」
バシャッ。ノム3の右手が”射撃可能状態”に移行する。
「ノム君もさ!ほら、撃ちたきゃオレだけ撃てよ!そんな小娘撃ったってよ・・・つまんねぇだろ・・・なぁ・・・ぉぃ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ノム3は答えない。
「なぁ海ちゃん!こいつの母親はオレが始末するからよぅ・・・それからオレを消してもいいから・・・」
両手で海猿の胸倉に掴みかかる。
「こいつは助けてやってくれよぅ!なぁ!こいつ・・・こいつはっ・・・!」
じゃりり。
ノム3が一歩前に進む。
「あいつに・・・おれの妹に似てやがんだよ・・・・・」
語尾は小さくなってしまって、誰にも聞こえなかったかもしれない。
「あいつが入院しても・・・おれ何にもできなくて・・・最後まで何にもできなくて・・また・・失っちゃうのかよ・・なぁ・・」
視界がぼやける。
「おれはもうあんな思いするの嫌なんだよおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
視界をぼやけさせていたモノが弾け、海猿の胸に抱かれたサリサの顔に降りかかる。
「ん・・・・おにぃ・・・・」
「下らん三文小説は終わりだ。お前から先に逝け」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
振り返ってノム3の眉間目掛け最後のナイフを投擲する。
いつの間にか持っていた、懐かしいナイフを。
ノム3の手に閃光が走り―


『んー・・・・待った』
「待ったは無しだって言ったでしょうが」
昼下がりの執務室。そこで2人の男がチェスをしている。
重厚なソファに体を半分だけ預け、一人は楽しそうに、1人は困ったように顎に手をやる。
その隣には、まばゆいばかりの銀髪を後で一つに束ねた女性が座っている。
「ぐんそ、ここ・・・これ・・・」
「あー!のりちゃん!しーっ!しーっ!」
先程まで楽しそうにしていた男が急に慌てふためく。
『おお、その手があったか。んー・・・ねちゃんは案外こーゆーの強いなぁ』
ぐんそ、と呼ばれた男が嬉々として駒を動かし、相手の駒を倒す。
「あー・・・オレのビショップが・・・・」
がっくりとうな垂れる男。
が、直ぐに頭を起こす。
「なーんてっ」
素早くナイトを進め、その場所に止める。
その場所は・・・・・
『うお!?』
「チェック」
「めーいと、だねぇぐんそ」
にひひ、とねちゃんと呼ばれた男と、のりちゃんと呼ばれた女が顔を見合して笑う。
『あー・・・・やられた・・・・グルだったとは思わなかったで・・・』
「なーにを今更w」
「そそ、うちやねちゃんが何しに来たかわかってたでしょーに」
お茶淹れるね、と言って彼女は席を立つ。
「そんで?軍曹、おれが勝ったけど?」
笑った表情とはまったく異なる紳士な赤い瞳で軍曹”iwaokun”を見る。
『わかったわかった・・・・ほれ、今連絡したで』
やれやれ、とソファから体を起こして、昼下がりの陽光差し込む窓際から庭を見る。
その先では、エレナと義母のアルセリーナが日向ぼっこをしていた。
自然と笑みが浮かぶ。
「ぐんそはもっとそんな顔を皆に見せてあげればいーのに」
お茶を淹れたのりちゃんが三つのカップと一つのプリンを机の上に置く。
「それは?」
「ん?うちの」
「おれのは・・・・無いか」
「メソちゃんに作ってもらえーw」
「プリン手作りって・・・・できんのかねぇ・・」
うおっほん、と咳払いをして元の表情に。
『そうもいかんで。これもマスターの仕事だでな』
「ふーん、そんで連絡は?」
『さっきねちゃんに急かされてやっといたでな。・・・・でも、間に合わないかもしれんで?』
かはっ、と金髪を揺らしてねちゃんが笑う。
「だいじょーぶでしょw」
「うちら、げんえーですから」
のりちゃんも自信満々に言う。
『まーったく。何を根拠にいってんだで』
苦笑して、iwaokunもカップに口をつけた。


目が覚めた時、そこは牢獄みたいな部屋だった。
いや、語弊無く牢獄だった。
四方をむき出しのコンクリートで固められ、窓には特殊な鉄格子。
唯一の扉はこれまた特殊な合金でつくられた扉で、がっちりと閉じられている。
左肩と右脇腹に包帯が巻かれていた。とは言っても、すでに傷は塞がっているようだが。
・・・・・あれから何日たったのか解らない。
でも、どうでも良かった。
無気力。
すべてに無関心。
体を横にした時、何かがジーンズのポケットでかちゃりと鳴る。
取り出して見ると、空になった赤ポーションの瓶だった。
また、何もできなった。
瓶を眺めていると、自然と涙が出てきた。
流れる、というよりは、垂れるように。

それから丸一日経って、牢獄から開放された。
立ち会ってくれたのは、バージル君1人。
「大丈夫?」
「・・・・・ん・・・・」
傷は問題無く回復している。心は・・・・まだだけれど。
「軍曹が・・・・執務室までって・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
今一番会いたくない人間だった。
裏切ったのだから。
もしかすると、自分は軍曹が暇になるまでここに入れられていて、暇になったら執務室で処刑するつもりだったのかもしれない。
けれど、それももういい。
処刑なら処刑で、別に良かった。
「執務室前までついて行くよ・・・」
「別に・・・」
言った途端によろけた。足に力が入らない。
「丸3日も寝てたからね。傷は治っても、表面上のモノだから・・」
昨日を含めて丸4日経っていた。
結局、バージル君に肩を借りて執務室に向かう事に。
「悪いな・・・・」
「気にしないで・・・」
執務室入り口まで辿り着く。
「また、後でね」
「あぁ・・・・会えたら・・・な」
今できるだけの笑顔をバージル君に向けて、執務室のドアをノックした。

『ヴェルト、4日の謹慎ご苦労だった。また仕事があれば呼ぶで、下がって休め』
「は?」
いつものように執務室に入り、いつものようにデカイ机の前に。
今日でこの部屋・・・いや、世界も見納めかと思い、いつもよりもジロジロと見回した。
軍曹・・・iwaokunは、これまたいつものように柱のような書類に目を通し、ペンを走らせている。
ぴたりとデカイ机の前に着いたとき、軍曹は顔もあげずに、そう言ったのだ。
しーん。
無言の空間。ただ、ペンの走る音と、時計の針が動く音のみ。
「軍曹?あの?」
『下がれ、と言ったで』
ギロリと眼鏡越しに睨まれる。
さっきまで死んでも良いと思っていたのに、もう死にたくは無くなっていた。
「・・・・・失礼しました」
それだけを言って執務室から退出する。
彼への処分は、すんだらしい。


ついつい拾ってしまった命。
でも、何もやる気は起きなくて。とりあえず何か食べて、自分の部屋で一眠りしようと思った。
全部はそれからだ。
みんなと仲直りするのも・・・・・・悲しむのも。
自室に足を向けた時、向こうから歩いてくる人影が見えた。
砦で実験しているか外で実験しているか。常に何かを実験してやまない男。
にだ。
長すぎるマントをズルズルと引き摺って、こっちに向かってくる。
両手には謎の液体が入った瓶。表情は・・・・なんだありゃ?
非常に楽しげ。
「おーVちゃん!」
「・・・・おう・・・」
片手を上げて挨拶。胸に抱えられた瓶の中身が気になる・・・・。
「牢獄きつかったろー?あそこにはオレが・・・・・いや、いい」
「なに!?なにしたの!?」
「いや・・ちょっと実験の成果を・・・にだ」
「なんの!?」
「まぁほらそれよりも!これ見てよ!」
胸に抱えていた瓶をこっちの目の前に突き出す。
ごぼごぼと泡立つ深緑の液体・・・いや・・・スライム?
「何これ・・・・・」
さっそく食欲が失せた。
「”べと液”の5年物!!!」
最低だった。
「年物って事は・・・寝かしてたの・・・?」
「まさかーははは、いくらニダでもそこまでわw買ったんだよー」
・・・・・どこでかは聞かなくいい・・・っつーか聞きたくなかった・・・。
「まぁ・・・おれ寝るから・・・・」
「あ、ごめんニダ。養生するニダー」
便利になったなー、と謎の言葉を残してにだは自室に入っていった。

自室に入る前に思い直し、食堂に寄って行く事にする。
いくらさっきので食欲が失せたとは言っても、何か口に入れておかないと元気が出ない。
「元気になっても・・・な・・・」
自嘲気味に笑って、食堂への階段を降りた。

食堂に入ると、ソファでジャギと海猿が机に突っ伏していた。
その前には開封された青い箱が二つと、今まさに風に乗って外に飛ばされようとしている柔らかい毛、ゼロピーがある。
「おれの・・・・200k・・・・・」
「ゼロ・・・ピ・・うう・・あいつ・・・侮れん・・・・」
死体のような2人を横目に、冷蔵庫を開ける。空だった。
「はぁぁぁぁ・・・・」
溜息だけを冷蔵庫に入れて、閉じようとする。
「あーっ!待って待って!」
のりちゃんが駆け寄ってきた。両手にビニール袋を下げて。
丁度買い物から帰ったのだろう。これで何か口にできる。
「っとー、ありがとねー」
ごそごそとビニール袋から買ったモノを取り出して冷蔵庫に入れる。
全部プリンだった。
「・・・・・・・・・」
「あ、これうちのだからね!食べちゃダメだよ!」
ぱたん。溜息とプリンのみを冷蔵庫は冷やし続ける。
「・・・・・・・・うううっ!」
空腹やらなにやらが口から漏れる。
「あー・・・そっかVちゃんお腹減ってるよね・・・でも・・・プリンはうちの!」
冷蔵庫は最強の守り手に守られた。
その代り
「食べたかったら買っておいでー」
ありがたい言葉を頂いた。


結局街まで買出しに行くことにする。
歩いて約20分。遠いような近いような。
今は面倒な気持ちが勝つ。が、何か買ってこなければ何も口にできそうになかった。
「のりちゃんのプリンだからな・・・・」
言ってから虚しくなる。一個くらい・・・いいじゃないか・・・・。
靴を履いて、砦の玄関を開ける。
天気は今日も晴れ。良い天気。陽光が玄関に差し込む。
そしてまっすぐ先に砦の門。
そのすぐ内側に、ヘンテコなモノを見つけた。
「?」
大きさは・・・そう・・・ウサギ小屋くらい。
全部木でできていると思われる・・・なんだ・・・・倉庫・・か?
しかしその考えをすぐに打ち消す。倉庫にしては・・・・その・・・なんとゆーか・・・派手すぎる。
派手とゆーか・・・。
近づくにつれて、その小屋の外観がしっかりわかってくる。
壁には謎の・・・そう・・・狂ったマシーンが書いたような抽象画みたいなものがデカデカと、これまた狂った色彩で書かれている。
さらに近づく。
カウンターのようなモノがあるのに気がついた。色とりどりの瓶が置かれている。・・・・中身は何か知らんが。
さらにさらに近づく。
屋根には看板がかかっていた。
『幻影騎士団専用』
と読めなくも無い。(一文字一文字全部色違い)いつの間にこんなモノが?
そしてカウンターの前に立って、店内を見た。

狭い店内で、少女が屈んで何かのダンボールを漁っている。
ヴェルト「パンツ見えてるからな」
少女「10kになりまーすっ!」
ヴェルト「たけぇ・・・・」
少女は振り向いて元気一杯に言った。
少女「いらっしゃいっ!!」
ヴェルト「商売・・・・?ここで・・?」
少女「はいっ!昨日からさせてもらってますっ!」
頷いた瞬間にゴーグルがズレる。
ヴェルト「おまぇ・・・また・・・はは・・・ゴーグル・・ズレてる・・」
少女「ショバ代でありますっ!さー!・・・・んにゃ、兄貴っ!!」

ヴェルト:赤ポーション一個獲得。




TAX:1
「お前、この小屋どうしたの?」
「小屋じゃないやいっ!”ラヴリー幻影よろず屋”!!」
「語呂最悪な・・・」
「これはマッスルガイが2人のナイス・ガイに作らしたものですのだ!」
「誰だマッスルガイ・・・」
「ごっつい癖にスーツ着て眼鏡かけてる人だっっっっ!!!」
「・・・・・もういい・・・・・」
「1人は良くお店に来て変なモノや青箱買ってくれて、武勇伝のコントやってくれますのだ」
「ジャギ・・・・」
「もう1人はいっつも礼儀正しいジェントルメンですのだ。でもたまに武勇伝のコントを手伝ってたりしますのだ」
「海・・・・」
「凄かったよお・・・マッスルガイが『作れ』って言ったら速攻作ってくれましたですのだ!」
光景が目に浮かぶよ・・・・・
おつかれ・・・ジャギに海・・・・・。


TAX:2
「ねちゃん、結局サリサはなんで助かったの?」
「んー?」
ソファでくつろぎながら漫画を読んでいた金髪紅目の司祭に尋ねる。
きっと知っているとするなら彼しかいないと思ったからだ。
「いや、軍曹がさ『身内にしちゃえばいいべな』って言ってたから、採用しちゃったんじゃないかな?」
「なんですと!?」
いつの間にか同僚になってたらしい。
後でエンブレム持ってるか聞いてみよう・・・・・持ってたらそれはそれでショックだけども。
「んーであの子の母親はここ10年くらいの記憶を消されて病院だと。」
「・・・・・・・・・・・」
そこまで甘くは無かった。けれど、これこそが妥当だとも思えた。
「あー・・・それともう一つ」
そう、もう一つあった。
「ノム君の行方、知らない?」
あの日からノム君だけは見かけていない。
つまり・・・・感謝も謝罪もできてない。
ナイフだけはいつの間にか部屋の机に置かれていたけれど。
「んー?・・・はははw心配無いって」
コップを口につけて中身を口に含む。
「あの日、ヴェル君担いでオレの所までぶっ飛んできたの、ノム君だしw」
それだけ言って、ねちゃんは漫画に目を戻した。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
COMMENT TO THIS ENTRY
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本編のとはまた違った感があっていいですなぁ。
こっちの更新もチェックせねば!

- from バジル -

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うむ・・
良い

- from ロキ -

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うんうん。ジャギせんせ共々よろしくな!みんなの暇つぶしになれば幸いでござる。

- from wara -

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まさかの展開だな!
各自がいい仕事してるぜええw

がんばりまっしょー^-^

わらびぃは基本長編担当でw

- from じゃぎ -

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いいんぢゃなぁぁぁぁい
ヽ(=´▽`=)ノホンキで読んじゃった!
ねちゃんカコイイ(笑

- from オクサマ -

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なにやら、いつの間にか凄い事やってたのですね。
文章書くのが苦手な自分は尊敬してしまいます!

- from ふぇんさ -

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