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Mirage-knight-cavalier02 Max end 
2006.05.30.Tue / 19:38 
ぼんやりとした何か白いイメージ。
それは部屋のようでもあり、白い色のイメージがあるのに漠然と空を連想した。
『私』にとっての空は、そんなイメージなのかもしれない。
何もない、でも透き通った色。
どこまでも、どこまでも―

「ん・・・ぅ・・・・」
イメージが浮上していくのがわかる。
白い空がどんどん遠くなって、暗闇に埋没してゆく。
その代わりに音が聞こえてきた。
ぱらぱらりと葉を風が揺らす音。
次に温度。
肌に纏わりつく空気の密度。心地よい密度。
そうして『私』は眼を開ける。


「ううん・・・・」
見慣れた部屋の見慣れたソファで身を起こす。
ちょっとリラックスするつもりが寝入ってしまったようだった。座る前には陽の当っていなかった左腕に、今は陽光が窓から注がれている。
大して眠ったつもりは無いけれど、それでも一時間は経ってしまったかもしれない。
幻影騎士団の砦、そのリビング兼食堂にある海猿のソファは寝心地が良い。クッションはわらびーが持ってきたものだけれど。
そんなに高価なモノでは無いと言っていたから、私も購入しようかな・・・。
あ、でも今月は思ったより出費が激しいしなぁ・・・うーん・・・まぁいざとなれば色々やり方はあるし・・・うーん。
そんな事をソファで足をぶらぶらさせながら考えていると、目の前に2人の男が向かい合って座っているのが見えた。
「ふ・・・中々やりますな、無影卿」
「ふふ・・・ジャギ卿こそ中々のお手前で。このポーン等気品すら感じる。」
ジャギと無影がタキシードでチェスをしていた。
私は卒倒した。

「おっと、みるきー嬢が眼を覚ましましたぞ、ジャギ卿」
「ふむ、しかし今また眠りに落ちているようですが?」
0.5秒で覚醒した。
しかし・・・今日はハロウィンであっただろうかいや違う(即否定)
自分の記憶が途切れたり改竄されたりすることはありえない。
「ジャギに無ちゃん・・・・なんて格好でなんてものをしてるの・・・・」
未だに伏し目がちに問う。直視するとまた卒倒しそうだったからだ。
「ウップス。無影卿、これは如何な質問か?」
「ふむ・・・・寝覚めが悪かったのかもしれませんね・・・お嬢、体に変調はありませんか?」
無影が胸にさしたハンカチ(白)を颯爽と目の前に差し出してくる。
条件反射で受け取ってしまい、口を覆うとほのかに薔薇の匂いがした。
私はまたも卒倒しそうになる。
「ハハハハハ、無影卿は嫌われた様ですな」
「なんと・・・・レディ、私めに何か粗相がございましたか?」
さも心配だといわんばかりの顔でこちらを見る『無影卿』
それを面白がってお上品に茶化す『ジャギ卿』
わけがわからなかった。
「無影卿、どうにもみるきー嬢の具合が悪いらしい。チェスは一旦置いて・・・」
「むむ、ジャギ卿、それはなりませんぞ。貴族と貴族のチェスは謂わば戦のようなモノ。それを差し置く事はまかりなりませんぞ」
僧兵と精錬師の成れの果てだろうが・・・。
「然り、だがそれでも真の貴族とはレィディを第一に尊重するモノでは?」
「それはもちろん!しかし目前の戦とレィディとは秤にかけられぬ・・・」
「・・・・チェスを続けて・・・私はちょっと席を外します。」
とりあえずこの異空間から離脱する事に決めた。とゆーか、長くいると命に支障をきたしそうだ。
席を立って出口に向かう。そこで、まだ左手にハンカチを持っている事に気がついた。
「あ・・・これ・・・」
洗濯して返そうなんて上品な事はこの砦の者には必要ないだろうと考え、机の上にでも置こうとする。
「OH!それはレディへのプレゼントですよ。ハンカチをレディに返されるなぞ、生き恥にしかなりませんからなぁ」
「ハハハ!無影卿の言う事には一理も二理もありますなぁ!ハハハ!」
何も考えないで周れ右。
どうも異星人の会話に思えて仕方ない。
ハンカチ(白、薔薇の香り)はリビング兼食堂の出口にあるゴミ箱に捨てることにした。

部屋を出てすぐに、廊下の先からドスドスと音を立ててわらびーが歩いてくるのが見えた。
「む!わらびーめ!」
「お、みるきか!!!!」
どうにも『!』の数がいつもより多い気がする。そしていつになく大声な気がする。
「なんだなんだ!元気いっぱいだな奴隷野朗!!」
とりあえず街に出ようと考えていたので、足にする事にした。
「奴隷野朗とは挨拶だな!!がはは!まぁいい、ちょっと待ってろ!!!」
お前は誰だ。
そんな単語が脳裏を掠める。
そしてわらびーは一つの部屋の扉の前で立ち止まり
「弟者ああああ!!!勝負じゃああああああ!!!!」
私の鼓膜をぶち破るつもりとしか思えない雄叫びを上げた。
「こ、殺す気かわらびーめ!!!」
足を蹴って見る。
タイヤを蹴ったような感触がして気持ち悪くなって引いた。
「兄者かああああああ!!!?懲りん男じゃのおおおぅううううううう!!!!」
間髪入れずに部屋のドアが内側からぶち破られ、中からロキが現れた。
なぜかタンクトップ一枚で、マッチョだった。
私は卒倒した。

「おおお!?どうしたみるきー!」
倒れる寸前にわらびーにがっしりと体を支えられる。むちゃくちゃがっしりと。
気持ち悪くなってまたもや0.5秒で覚醒した。
「がはは!みるきーの顔を見よ兄者!嫌がってるぜ!」
「馬鹿な!ワシのこの丸太のような腕が気に食わんと!?」
「兄者の腕には美しさがまったくない!美しいとは・・・・」
ぐぐぐっと腕を曲げるロキ。その腕に幾本もの筋肉の筋が浮き上がる。
「こうゆーことだー!!わはははは!!!」
「気分が悪いからちょっと・・・」
もう此処に居てはいけないような気分になってきたので、足早に去る。
背中から声が聞こえる。
「今日こそワシが勝つんじゃあああああ!!!!」
「はっ!STRカンストのオレに兄者ごときが勝てると思うてかー!!!」
殴りWIZだったらしい。


隣の部屋でも男が2人椅子に腰掛けてTVを見ている。
”能力者”のTV鑑賞は珍しい。
既に電脳化をしているはずなので、脳内に直接映像を投影する事ができるからだ。
そしてその映像は他者と共有する事ができる。
「ちょ・・・おま・・・それは流石に・・・・」
男の1人、ノム3は何故かTVを見て赤面している。いや、初めて見る表情だからこれが赤面なのかどうなのかわからないけれど。
顔を真っ赤にして、両手で眼を塞いで(もちろん指の間から見ている)TVにちょっと斜めに構える感じ。
「うはwwwwwたまんねwwwwwwww」
もう1人の男、海猿はいつもスーツのくせに、今日はTシャツにジーンズを膝丈で切ったパンツと非常にラフな格好だ。
「ちょ・・・音くらい消そうよ・・・」
「ばかwwww音が無いと全然ダメだってwwwwwww」
顔を真っ赤にしてリモコンでVOLを下げようとするノム3に、それを力ずくで辞めさせようとする海猿。
TVに写っていたのはエロ動画だった。
しかも結構ハード目。
私はry
「亜qwせdrftgyふじこlp;!?」
卒倒と覚醒をほぼ同時に起こし、手近にあるものを2人に投げつける。
「うわっ!ちょっ!ちがっ!違うんだって!海がこれ!」
「ちょwwwwおれのせいwwwwwwww」
手をぶんぶんと振って否定するノム3とゲラゲラと笑い続ける海猿。
投げつけるものが無くなったと同時に部屋から飛び出す。
まったく、こんな白昼に何をやらかしてるんだあいつらはっ!!
この件ばかりは軍曹に言いつけてやろうと心に決めて、砦から飛び出した。




「ふははははっ!さすがのまじかるテッサと謂えど杖が無ければ手も足も出まい!!」
「・・・・くぅっ・・・・!!!!」
そっきまで晴れていた空がいつの間にか曇っていて、その空にはなぜかいつも着ている服を灰色に染めたバージルが浮かんでいる。
その視線の先には、1人のマジシャン少女が苦虫を噛み潰したような表情でバージルを睨みつけていた。
ちなみにバージルの目の下には不自然な程に黒いクマができており、まじかるテッサと呼ばれたマジシャン少女は不自然な程短いスカートを穿いて、金色の大きな鈴で金色の髪を纏めている。
「そぅれ!これでも食らえ!」
灰色バージルが中空で両腕を交差させると、まじかるテッサの足元にヒドラが八体も!?
「きゃっ!」
「ははははは!たっぷり可愛がってもらうがいい!!」
中空のバージルは超嬉しそう。
なんだこのエロゲーみたいな展開は。
あきれ返ってみている間にも、ヒドラの触手がまじかるテッサに伸びる!!!
その触手がまじかるテッサの足に触れる瞬間!
「いやーーーーーー!!!!!!」
ぼっかーん!!!
目をぎゅっと瞑ったまじかるテッサが叫ぶと同時に何かよくわからない強力な力がまじかるテッサを中心に爆発しヒドラを皆殺しにした!(句読点なし。一気にお読み下さい)
「えええい小癪な!!ならこれならば・・・・・ぬッ!?」
さっきの「ぼっかーん」で起こった土煙を両腕でばさばさとはらっていた灰色バージルの表情に緊張が走る。
土煙の中心から黄金色の光が漏れ出す。
だんだんと煙が晴れ、その中から出てきたのは・・・
「絶対・・・・絶対許さないんだからぁ!!」
額に謎の紋章を浮かび上がらせたまじかるテッサだった!
風でばたばたと不自然に短いスカートがなびくが、決してパンツは見えない。
「ぬぅ!!その紋章は!やはり貴様・・・・アトランティスの血を・・・!!」
もう設定とかどうでも良くなってくるような事を灰色バージルが無責任に叫ぶ。
「来なさい!!まじかるステッキ”愛羅武憂”ううううううううううう!!!!!」
まじかるテッサが右手を天に掲げると同時に、上空を覆っていた雲が円形に晴れ渡りそこから光り輝く黄金の杖が現れた!
『説明しよう!まじかるステッキ”愛羅武憂”は普段は海中深くに眠っているアトランティス帝国の武器庫に奉納されており、その帝国の王家の血を引く者の召喚に応じて空間両断跳躍能力を発揮してその手に現れるのだ!!!』
「だれっ!?」
目の前の展開に何もかもついて行けてなかったので、もちろん耳元で怒鳴られるなんて考えもしなかった。
「おれだったりして」
ジョンだった。声優使いまわしらしい。
「えーーーい!」
振り返ると、空中の灰色バージルにまじかるテッサがフロストダイバーの凍結を成功させている所だった。
「ぬぁぁぁ!!」
空中でカチンコチンに凍りつくバージル。それでも浮かんでいるのは意地か根性か。
「成敗!!」
すばばばばばばばばばばっ。
その氷結した灰色バージルにサンダーストームをぶち当てるまじかるテッサ。
「ぐうう・・・・おのれぇ・・・・・」
真っ黒こげになって、体の節々から火を噴く灰色バージル。爆発しそうな予感がした。
「このままで・・・・済むと・・・・思うなよおおおおおお!!!!」
どがーんっ。
やっぱり爆発した。
その爆発を背中に受けながら
「自己破産をして借金取りから逃げられても、私からは逃げられないわっ!!!」
まじかるテッサは決めポーズと決めセリフをきっちりキメていた。


軽い眩暈。
ああ・・・この感触はもうなんだか慣れてしまった・・・卒倒の予感・・・・。
今回は誰も受け止めてくれそうにないから、なんとか地面に着くまでに意識が飛びますように。
痛いのは



ぼんやりとした何か白いイメージ。
それは部屋のようでもあり、白い色のイメージがあるのに漠然と空を連想した。
『私』にとっての空は、そんなイメージなのかもしれない。
何もない、でも透き通った色。
どこまでも、どこまでも―

「ん・・・ぅ・・・・」
イメージが浮上していくのがわかる。
白い空がどんどん遠くなって、暗闇に埋没してゆく。
その代わりに音が聞こえてきた。
何か単一の音。人の声?いや、これは人の怒号?
それと共に金属を何かで強く弾くような鋭い音。
次は嗅覚。
一度大きく吸い込んでしまったその匂いが鼻から離れない。
噎せ返るような・・・・・火薬の匂い。
まじかるテッサの魔法のせいかもしれない。こんな量の火薬は。
目が覚めたら・・・そうだ、軍曹に会いに行こう。のりちゃんでもねちゃんでもいい。
砦のみんながどうかしてしまったって、言いに行こう。
そうして『私』は眼を開ける。


「・・・・・るなっ!距離に気をつけて!!」
「馬鹿!頭を出すな!死にたいか!!」
目覚めは最悪。
心地もなにもあったもんじゃない、最悪の目覚め。背中にあたる何かが、金属なのか激しく背を刺す。
「・・・・・っつぅ・・・・」
顔を顰めて目をこじ開ける。
いきなり埃が目に入った。
「っつ・・・・」
目をこすろうと手を挙げて、その手が掴まれた。
「?」
「みるき・・・・良かった・・・気がついたか」
何かがこすろうとしていた目に触れる。見えないけど、柔らかい布のような感触。
でもその声には聞き覚えがある。
「・・・・わらびー?」
「おう、わらびーだぞ。みるき、さっきの爆発で気を失ってさ、中々覚醒しないから心配してたんだ」
「んむー・・・・わらびーめー・・・」
バチバチと何かが弾ける音、チキチキと何かが削れる音が絶えず聞こえてくる。
「むー・・・・夢を見てた・・・・」
目に当てられていたやわらかい布を手に取って、自分で埃の入った目を丁寧に拭う。
「ん?どんな?」
「んー・・・・ジャギと無影が貴族でわらびーとロキ君がマッチョでノム君と海君がエロ動画見ててテッサちゃんがまじかる少女でバージル君が悪の司祭だった」
自分で言っててやっぱり卒倒しそうな配役に我ながら感心する。いや、寒心か。
「ぶwなんだそりゃww」
ふき出すわらびー。そりゃ私だってそんなの聞いたら精神がどうかしたのかと思うけれど。
「笑うなっ!わらびーめ!」
ぽかりと殴ってやろうと思ってなんとか目を開けた先。
「あぁ・・・でも、その夢の方がよかったかも」
わらびーが涙の痕が残る顔で微笑んでいた。


「へっ・・・みるきが目ぇ覚ましてもなぁ。」
そのわらびーの後で、見慣れない兜が見えた。
「・・・・・まめちゃん?」
その兜のせいで一瞬わからなかったが、その左目の下の涙タトゥーは間違いなくまめちゃんだ。
いつもは『髪型が崩れるしダセェからしない』と言っていたまめちゃんが、今は無骨な兜を頭に載せている。
「よぅ、気がついたか」
ナイフを左手に持ち、そのまま手を挙げる。
私とわらびーとまめちゃんの背中には所々ささくれ立った鉄板が一枚。
全員その鉄板に背中を預けて、座り込んでいる状態だ。
「まめー、向こうの様子はどう?」
わらびーがまめちゃんの方に向いて尋ねる。
「あー、ちらっとしか見えなかったけどまだ海とピンクが見えたからニレは無事だろ。」
空いた右手で指す方向には、同じように鉄板が床に突き刺さっている。そこから確かにピンク色の髪がチラチラ見えていた。
「もう一つ向こうは?」
「わかんね。電通はこの距離だからな・・・盗聴してくださいって言ってる様なもんだくそったれ。」
ベーッと舌を出して悪態をつくまめちゃん。
状況がまったくつかめないし、2人の会話も意味がわからない。
とりあえず状況を確認しようと、中腰になって鉄板から顔を出す。
土煙と炎に包まれて見難かったけど、ソレはしっかり見えた。
床に伏せるけりたまの姿。上半身だけになって、既に光子化していたけれど。
「危ない!!」
わらびーが覆いかぶさるように床に引き摺り倒してきた。
そのままの状態で見た事を自分なりに考えてみる。
「・・・・・・・・・・・・」
呆然とした。一瞬だけ見た部屋の装飾からしてここは幻影騎士団の砦の中。しかも、この部屋の広さの規模は2Fの大広間しかありえない。
そこがこんなありさまで、けりたまはあきらかに絶命していた。
一体・・・どこのギルドが攻めて来たというのだろう・・・。
「どこのギルドが・・・・」
ついつい思った事が口に出てしまった。気にはしていない、してはいけない、Gvギルドなら人の死は当たりまえのものだと割り切っていた心が、けりたまの死に揺さぶられていた。
「みるき・・・・」
「はっ!”どこのギルド”だと?ハハハ、こいつ爆風で吹っ飛ばされてキオクソーシツになっちゃったらしいぜw」
有り得ない。自分の”記憶”は失われる事も改竄される事も捏造される事も無い。それはそういった仕組みだからだ。
”世界は起こった事を忘れない”のだから。
しかしそれでも記憶が無い。しかも、まったくだ。
目を覚ます前の記憶がはっきりしないのでは無い。まったく、抜け落ちている。
この状況での判断は不可能。情報が少なすぎる。それでもいくつかの推理はできたけれど。
「オレ達の敵はなぁ・・・・・ははは・・・・」
自虐的に笑うまめちゃん。自分でこれから言わんとする事がそれ程おかしいのだろう。
「”幻影騎士団”さ」
そういってついに爆笑した。


事の始まりは一通の電通。
『幻影所属のモノは2F大広間に集まるように』
とiwaokun名義で出されたもの。
丁度明日がGvだった為、その打ち合わせに集まっていたギルドメンバーの殆どと、”MI”から代表でマドラ・社が2F大広間に集合した。
そして、これからその打ち合わせが行われようとしていたその場で、iwaokunがいきなり言い放った言葉。
『皆には死んでもらうことになったでな』
これが全ての引き金だった。
最初その場に集まった人間は皆、Gvに備えて緊張しているだろうギルドメンバーに冗談の一つでも投げかけているように見えた。
が、そのiwaokunの雰囲気が、両脇にネッドとのりちゃんを従えた時にがらっと変わる。
一番最初に自我を取り戻したのはけりたまだった。
「散れえええええええええ!!!!」
叫びながら自身の能力を全開にして、大広間の内面を覆っている特殊装甲の壁を引き剥がして地面に立て、障害物にした。
そしてやっと皆が自我を取り戻し、その障害物に身を隠そうとした時、iwaokunの剣でけりたまは両断された。
一撃で。
その状況を目にしたニレコが飛び出し、そこにネッドの青い光線が走る。3本の光。
飛び出したニレコの危機を感じたジャギが、ニレコの腕をつかんで障害物の陰に引き戻し、その反動で自身が障害物の外に。
三本の光は違わずジャギの体に命中し、ジャギはその場で光子化して消えた。
それを見て逆上した社が槍を片手に躍り出て、それを援護する為にめぐが銃を構える。
めぐの機銃掃射をネッドとのりちゃんの2人がキリエで防いでいる間に社はiwaokunに接敵。その槍を振りかざす。
が、その槍がiwaokunの喉を切り裂くより一瞬先、”ザ・シルバー”のりちゃんの腕から銀色の細い糸が伸びて社自身を絡め採る。
そしてそのまま壁に貼り付けられた。
『社か・・・中々死なんからそのままでええでな』
「ぶーん」
のりちゃんが社に絡めていた糸の数を増やす。
シュコン。
めぐが3人にむけてグレネード弾を発射。命中爆破し、対象が煙に包まれる。
その隙により強力な火器を練成しようとめぐが手の銃を光に戻した瞬間、その胸に槍が生えた。
『煙でそっちから見えなくてもな、こっちから見えないとは限らんで』
めぐは絶命の言葉も無く、光になって消えた。
そしてその煙が晴れる直前、ノム3が右手から”ラグナロク”を発射。またもや爆発と、それに伴う爆煙で何も見えなくなった。
その時の衝撃で、私は意識を失ったらしい。


キンッ!
と酷く現実的な鋭い金属音で意識が回想と思考の海から引き上げられる。
そっと身を守っている障害物から顔を出すと、iwaokunに打ち込むマドラの姿が見えた。
そして、その少し後で光の束を撃つノム3の姿も。
平穏時には決して見ることができない2TOPだ。
キンッ!
また鋭い音。
マドラの剣をiwaokunの剣が弾く音だ。
『はははwこんだけ防げればマドラ流は免許皆伝だべなw』
「・・・・・・シィッ!!」 
斬檄のイメージが空を切る。
マドラの剣は通常の剣ではない。その”能力”を持ってして、既に攻撃というよりは現象に近い物となっている。
”限定空間内切断能力”
それはその空間に突然起こる”切断”という”現象”
故に、マドラの思考を読んでその現象の軌道を避ける、のならばまだ解る。
が、iwaokunはその剣を”受けている”
その”切断”は斬り始めと斬り終わりが無い。つまり、向かってきて遠ざかる、みたいなモノとは訳が違う。
マドラが思考して、”現象”が起こるまでコンマ数秒。
たとえ思考が読めていても、剣をその軌道に合わせるのは不可能に近い。
・・・・・iwaokunは未来視か思考制御ができるのかもしれない。
そこまで思い至った時、またわらびーに引き摺り倒される。
「わらびーめぇぇぇぇぇ!!!」
「だから危ないって!!」
すぐ頭の上、さっきまで自分の顔があった所を青い光線が通過する。
「・・・・わ・・・わらびーめ・・・・っ!」
ついつい声が震えてしまった。
がしゃんっ。
大きな音がして、金属音が途絶える。
懲りずに顔を出してみると、マドラの超大型両手剣が床に落ちて光になりかかっている。
そしてiwaokunの剣はマドラの体を貫通していた。
『攻撃はそこそこ。でも防御はからっきしだなおいw』
マドラの胸から蛍が飛び立つように光が漏れる。
「モイモイいいいいいいい!!!!」
社の絶叫が木霊する。
『うるせぇな。ねちゃん、黙らせて』
ネッドの右手が上がり、その腕から光の線が4本ほど社に向かって伸びる。
その瞬間、iwaokunの前にスマックが現れた。
”現れた”と表現してまったく語弊は無い。なんの挙動も無く、その場にたどり着いたのだから。
「”富嶽貫通”」
ただの右正拳に見える。が、その威力がただの正拳では無い事は”裏幻影”のモノならば全員知っている。
『おっ』
驚いたように反射的に挙げた左手に、スマックの”富嶽貫通”は受け止められる。そのまま拳を握られた。
「・・・・・・・・ちぃ・・」
「スマァァァァ!いくぞおおおおお!!!!」
スマックの舌打ちと同時に御影が障害物から飛び出し、光に包まれた両手をかざす。
御影の得意技、マグヌスエクソシズムの五乗掛け。
その詠唱を中段させるべく、ネッドが光線を放つ。が、その光線は御影に当たる直前で捻じ曲がった。
「今のオレには聖属性攻撃はきかんっ!!」
御影の体に浮かび上がる”聖紋”がそうさせるのか、指向性しかないはずの光線がぐにゃりと曲がっては目標からはずれる。
『司君、まだスマ君はオレの手の中だで?一緒に殺す気か?』
iwaokunは先程掴んだスマックの手を開放していない。
「そいつに聞いてみるといい!」
既に光の方陣を3つ完成させた御影が吼える。
スマックの体の中心は、星を閉じ込めたように光っていた。
『ふーん・・・”士魂”か』
”士魂”はスマック最終奥義。自爆である。
威力の程はわからないけれど(自爆なんてした事なくて当たり前だが)この砦くらいは地上から消滅させてしまうだろうとの事。
根拠も何もないが。
『二重の捨て身攻撃か・・・・おもしれぇw』
ネッドは両手を合わせて10本の光線を御影に向けて照射。全て捻じ曲がってしまい、命中しない。
「効かんと言っているだろう・・・がっ!?」
「うちもおるよ」
4つ目の方陣を完成させて、ネッドの光線を捻じ曲げて居た御影の胸に銀色の糸が4本貫通する。
方陣は光を失って消えてゆく。
「・・・・・司っ・・・・・!」
振り返って崩れ落ちる御影にむかって言ったその言葉が、スマックの最後の言葉になった。
『おもしれぇけど、これでおしまいだで』
空いた右手が易々とスマックの体を貫通する。その血まみれの手には・・・・・スマックの心臓。
2人は同時に体の中心から光になった。
「司っp・・・すまっp・・・・・」
わらびーが歯軋りをする。その顔の部分のやや下に青い光線が着弾、ネッドが顔を出すのも容赦しない。
「これで”幻影騎士団”も終わりだな・・・・へっ、それともあの3人がいれば”幻影騎士団”ってかwわらえねぇw」
まめちゃんがガムを噛みながら履き捨てるように呟く。
『おいおい、前にいるのノム君だけになったで?助けにこねぇとw』
「みるるー!おいでー。うちと遊ぼうー」
「海君、相棒死んじゃったなぁ!どうする?なぁ、どうする?」
”最強の幻影”と”緋色の瞳”と”銀色”が談笑するように語り掛けてくる。
『どうせならお前等、一斉にかかってこねぇ?もう飽きちまったでな、それにみんなで”うおー!”って来れば勝てるかもしれんでw?』
笑みを含んだ声が苛立ちを誘う。
「そうだよ・・・まめちゃん、軍曹は範囲攻撃を使ってない。もしかしたら範囲攻撃は持ってないのかも」
「ばーか。そんな仮定だけで命を晒せるかっつーのwまぁどの道待ってても緩やかに全滅するだけだけどなwだから・・・誰か踏み出すだろうよ」
最初は楽しそうに喋っていたのに、最後の方はとてもつまらなさそうだった。
とても。
のりちゃんが右手から伸びる糸で社を押さえつけながら左手の糸で障害物を撫で斬りにし始める。
ノム3はiwaokunへ集中砲火。ネッドの対爆対炎対冷対地防壁を一枚一枚剥がしにかかる。
iwaokunはその前身に対魔法防壁、対魔法耐性障壁を作り状況を見ている。
ネッドの青い光線が一枚の鉄板に当たり、そこに穴を穿った時その雄叫びは上がった。
「しあああああぁああぁぁぁぁぁ!!!」
ヴェルトが両手に持てるだけのナイフを持って鉄板から飛び出す。
その影には同じくナイフを両手に構えたデッドが潜む。
と、同時にまたiwaokunの前に人影が”現れる”。
『お、やる気になったか』
「いや全然。死ぬの怖いに決まってるでしょうがw」
無影が巨大な斧を持ってiwaokunに立ち塞がる。

「ちっ・・・ほら言わんこっちゃねぇ」
まめちゃんが指した先は丁度ヴェルトが飛び出した先だ。
「まめちゃん、オレらも・・・・・」
わらびーが騎兵剣を握りなおす。
「あーあ、どうせ勝てやしねぇってのに・・・まぁ最後くらい派手にやっか。おら、行くぞ」
中腰になったまめちゃんが走り出す。鉄板の外・・・・地獄に。
「うん・・・みるき」
急に紳士な目で見られてびっくりする。
「みるきはここから出ないで。誰か・・・きっと誰かがなんとかしてくれるから。頭下げて、顔出さないでね」
「わ・・・わらびー・・・わらびーめ!」
わらびーはズレる兜を直しながら、まめちゃんの後に続いて走り出した。
地獄へ。
丁度2人に先行する形で海猿が鉄板から飛び出す。そしてネッドの青い光線を一手に受けた。
が、その光線は全て体に当る手前で捻じ曲がる。
大気の精霊に干渉して、光の屈折率を変えたのかもしれない。


そして、今立っているのは”最強の幻影”と”緋色の瞳”と”銀色”と”盤上のACE”の4人のみ。
奇襲はあっさりと迎撃され、一人一人確実に殺されていった。
今最後に死んだ海猿が光に帰ろうとしている。
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」
無限機関を搭載しているはずのノム3が肩で息をする。先程の奇襲に合わせて”ラグナロク”を連射したからかもしれない。
『まぁ・・・思っていたより楽しかったでな』
もうiwaokunの周りには対魔法防壁も対魔法耐性障壁も無い。ネッドの支援防壁すら無い。
ただ剣を体の前で地面に刺し、両手を柄に乗せてノム3を見る。
その眼差しは驚く程穏やかだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
がしゃり、と未だシュウシュウと音を立て、煙の立つ右腕を上げるノム3。
『これで、終わりだで』
その頭に、iwaokunの剣が振り下ろされた。

そして私の意識は暗転する―


結局、『私』は色々な世界に意識を持って飛び込んだ。
ノム3がおかしくなってしまう世界。
ヴェルトがおかしくなってしまう世界。
テッサがおかしくなってしまう世界。
バージルと海猿が2人同時に殺戮を開始する世界。
わらびーがおかしくなってしまう世界。
みんなが狂ってしまった世界。
その中でも一番多かったのが、”iwaokunとのりちゃんとネッドが幻影騎士団を殺戮する世界”だった。
概要は同じ。
幻影騎士団が集められ、iwaokunが殺戮を宣言。
そこから少しだけ違っていたりする。
最初にけりたまが障害物を呼び寄せるのは高確率で起こる事なのだが、その後うまくiwaokunの攻撃を回避して生き延びる世界。
もちろん、最後には全滅してしまうのだが。
そして、これもあまり関係は無いのかもしれないが、幻影メンバーが死ぬ順番がちょこちょこ違う。
ジャギがニレコを助けなかったり、スマックが先に死んで御影が逆上したり、海猿が最初に死んだり。
そんな、死の世界を何十回も見た。
けれども、その中でiwaokunが倒れる事は結局、一度もなかった。

そして、幸せな幻影騎士団もまた、一度もなかった。


ぼんやりとした何か白いイメージ。
それは部屋のようでもあり、白い色のイメージがあるのに漠然と空を連想した。
『私』にとっての空は、そんなイメージなのかもしれない。
何もない、でも透き通った色。
どこまでも、どこまでも―

「ん・・・ぅ・・・・」
イメージが浮上していくのがわかる。
白い空がどんどん遠くなって、暗闇に埋没してゆく。
その代わりに音が聞こえてきた。
ぱらぱらりと葉を風が揺らす音。
次に温度。
布地を透過して感じられる人の体温。柔らかい暖かさ。心地よい感触。
そうして『私』は眼を開けた。

「ん?みるるー、目が覚めた?」
優しい声が降ってくる。
そして頭の下には柔らかい感触。
すぐに膝枕をされている事に気がつく。
「ん・・・・んんー・・・・・」
陽光が目蓋を貫いて眩しい。
「うぁー・・・幸せそうに寝てやがんなぁ・・・落書きしていい?w」
「ダメダメ、ねちゃんはいつもそんなことゆー」
ほっぺたを抓られたお陰で意識が急浮上する。
「ほらー、起こしたー」
目蓋をぎりぎり開いた先には、逆光でシルエットだけになったのりちゃんが見えた。
「んぐ・・・・・夢見てた・・・・」
くしゃっと顔をのりちゃんの太ももに押し付ける。暖かい。
「夢?どんな夢?」
「悪い夢・・・・とっても酷い・・・・夢・・・・」
そこまで言って今まで体験した『夢』の内容を思い出す。
「Σ」
「きゃあっ!」
膝枕の上で緊急起動。のりちゃんはびっくりしてのけぞってしまった。
「おお?」
ネッドも驚いてこっちを見ている。
「ここはっ!?ここはどこ!?」
現在地の確認。青空が見えるという事は、砦の庭かもしれない。
「え?幻影砦の庭・・・だけど?」
のりちゃんとネッドは芝生に直接腰掛けていた。
そのすぐ近くにランチボックスが4つ。
「おらー!フルハウスだ!どうだ!参ったか!!」
「ぬぅ・・・ワシは2ペア」
「オレなんてブタ・・・くそぅジャギめ・・・やるな」
「あーあ、おれもブタだー。くっそーついてねぇなー」
砦の中、一番庭に近いあたりからジャギや海猿、ヴェルトの声が聞こえ、カードを持って騒いでいる姿も見える。
「こうですの?こうすればいいんですの?」
「いやーおれパラディンだからなぁ・・・まぁそれでいいんじゃないかなぁ・・・」
「スク水でやればもっと良いんじゃないか「やあっ(はーと)」
「ジョンの阿呆・・・・」
少し離れた芝生の上で、わらびー一家が養女にナイフ投げを教えている。
ジョンとロキは芝生の上に座り、それを近くで眺めていた。
柔らかい陽光にピクニック装備のメンバー。
この『世界』は・・・・・
とても幸せそうな『世界』。
でも、先程言ったように今まで見た”幻影騎士団”に幸せがあった事は無い。
この風景も何度が見た。そしてこの幸せな風景は、これから壊れるのだ。
1人の暗殺者の手によって。
「・・・・iwaokun・・・軍曹はどこ!?」
がばっと身を乗り出し、反り返ったのりちゃんの眼前まで近づく。
「え?多分執務室にいると思うけど・・・・あ!みるるー!」
『執務室』と聞こえた辺りで駆け出す。もし私が見たことのある『あの世界』なら急がなきゃいけない!
「もう・・・ちょうどお昼時なのに・・・・」
無念そうなのりちゃんの声が、背中に痛かった。


カッカッカッカッカッ!
赤いピンヒールが砦の床を刻み、廊下にけたたましくその音が反響する。
走るのに向いていないその靴がもどかしくなり、その場に脱ぎ捨てて裸足で駆け出す。お気に入りだったんだけどなぁ・・・
そして息も絶えかけた頃、やっと執務室の前についた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
部屋の外からでもわかるこの存在感。間違いなく幻影騎士団・団長iwaokunはこの中にいる。
何度も何度も、ギルドメンバーを殺戮した”最強の幻影”
扉に触れて押し開けようとした時、扉は勝手に開いた。
誘われる様に、中に入る。

『なんだ、みるきか。只事じゃない気配だったで、びっくりした』
陽光が差し込む執務室の中、iwaokunはいつもの馬鹿デカイ机の上で手を合わせ、こちらを見ている。
その手の脇には、まだ湯気の立つカップが一つ。
いつも天井に届けといわんばかりにそそり立つ書類の柱は、今日は無い。
だからか、iwaokunはいつもよりやわらかな表情をしていた。
「iwaokun・・・デッドは?デッドがどこにいるか、知らない?」
そう、私が見た『夢の世界』でこの幸せをぶち壊しにするのはただ1人の暗殺者・・・デッド。
彼はいきなり砦の庭に現れると、その能力”Air”で瞬く間にわらびー、アルセリーナ、エレナ、ロキ、ジョンを毒殺する。
そして、砦での乱戦。
ピクニックはぐちゃぐちゃに汚された。
『デッド?んー・・・周囲5kmにはおらんで。どうかしたか?』
わかるらしかった。
デッドはいない・・・・それでも安心は出来ない。
誰がいつおかしくなるか、わからないからだ。
「ねぇiwaokun・・・・あなたは、なんで幻影騎士団を作ったの?」
時間が惜しい。何か起こってからでは遅すぎる。その為に繰り出した、色々な意味を含んだ最強の質問。
今まで軟らかだったiwaokunの顔に、一瞬だけ緊張が走る。それもほんの一瞬の事で、また軟らかな顔に戻った。
『まぁ・・・・みるきは知ってるだろうから言うけどな。おれは”能力管理委員”のモノだで』
言いながら眼鏡を取るiwaokun。
”能力管理委員会”知っている。
それは表向きは存在しない事になっている特務機関。裏の機関まで知っている者の中でも、ごく一部しか全容を知らない特務中の特務。
その活動内容は”能力者の管理・運営・処分”
管理とは”能力者”の数と個性を調べ、その位置を常に把握する事。
運営とは”能力者”に王都を助けるような仕事を秘密裏にさせる事。
処分とはX(シングルエックス)以上と判断された”危険能力者”の暗殺。
この三つ。
『ほら、そこの窓からエレナがナイフ投げして遊んでるのが見えんだろ?』
指差された窓から庭を見ると、確かにそこにはわらびー一家が遊んでいるのが見える。エレナは楽しそうに笑っていた。
『エレナはXX判定を受けている』
「え?」
おかしい。確かに、彼女の才能と能力は恐ろしいモノがある。XX(ダブルエックス)判定も頷けるものだ。
しかし、それならば既に”能管”に処分されていなければおかしいのだ。
『エレナだけじゃないでな。庭にいるアルセリーナ以外全員・・・もっと言えば、幻影騎士団所属のメンバーは全員がX判定以上を受けている』
なんて事だ。
それならば、ギルドメンバー全員が処分対象になっている事になる。
『しかもな、うちのメンバーは殆どがその精神が重篤な者ばかりなんだ』
精神が重篤・・・・・・。
今までに見た『夢の世界』でおかしくなってしまったメンバーを思い出す。
それは例外無くギルドメンバーに起こっていた。
『さて、いくらみるきでもここまでだで。後は自分で判断してくれ』
カップを傾け、まだ暖かい液体を口に含むiwaokun。
「iwaokun・・・私はiwaokunがネッドとのりちゃんと一緒にメンバーを虐殺するのを”見た”」
『・・・・・・・・そうか』
「何度も何度も・・・・・それを”見て”きたっ!」
『そうか・・・・・辛かったな』
反論しない。それはiwaokun自身、その可能性がある事を示唆する。
『でも・・・・・』
言葉を続けるiwaokun
『この世界に虐殺は無い。保証する。おれはやる気無いし、メンバーの誰にも変調は起こってない』
庭から楽しそうな声が聞こえてくる。
そこではまだピクニックが続いていて、わらびー一家にネッドとのりちゃんも加わっていた。
柔らかな日差しに、心地よい風。芝生の緑っぽい匂いが運ばれてきて。
やっと見つけた、幸せな世界。
『なぁみるき・・・・”この世界”でやっていかないか。この世界には辛い事は無い。みるきを傷つけた色々な物は・・・無い』
窓の外、庭ではみんなが楽しそうにはしゃいでいる。
正直を言えば、さっきから混ざりたくて仕方無い。傍らにおいてあるランチボックスを見た時、きゅうとお腹が鳴った。
「う・・・・・」
うん、と頷こうとした。『この世界でやっていきたい』と。早く庭に出て遊びたかったし、お腹も減っていた。
何より、あんな残酷な世界をもう見たくは無かった。
そして頷く瞬間、フラッシュバック。
風にさらわれるように消えた社。
けりたまの壮絶な死。
ノム3の散り様。
ニレコの悲痛。
愕然とするわらびーの顔。
全てが一瞬で映り、そして消えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメ」
擦れる声で誰にも聞こえないように呟く。
『どうして?』
それでも目の前の魔人には聞こえてしまったようだ。
そう、”どうして?”
自分は幸せを求めて夢を見続けた。そしてそれはここにある。
みんなと遊びたい。お腹も減った。
残酷なのはもう嫌・・・・・・。
なのに”どうして?”
もう先程のフラッシュバックは起こらない。
今なら全然言い直せるだろう。
けれど。
「私には、やる事があるから」
前だけを向いて、恐ろしいiwaokunの目を真っ直ぐに見て、自分で決めた。
『・・・・・・・・・そうか。』
iwaokunはうっすらと笑って、手近な紙を一枚手に取る。そしてその上にペンを走らせた。
『ほれみるき。仕事だで。』
そして、書き終わった紙を机の上で滑らせる。
『今度はおつかいじゃないでな。しっかりやれ』
手に取った紙には
”帰還命令:元の世界に戻って、やるべき事を成せ”
「うんっ!」
白いワンピースの少女は、くしゃっと指示書を握りつぶして『この世界』から消えた。数滴の涙を、煌かせて。

「・・・・・行っちゃった?」
執務室の入り口でのりちゃんが部屋を覗き込んでいる。
『あぁ、行ったで。』
その言葉を聞いて、部屋の中に入ってくる。
「あーあ、あのみるるーもかーいかったのになー」
『仕方ないで。そうなる事だったんだし』
「とかなんとか言って心配してるくせにー」
『手がかかる子程可愛いって言うでなぁ』
2人は執務室の中で顔を合わして笑った。



ぼんやりとした何か赤いイメージ。
それは部屋のようでもあり、赤色のイメージがあるのに漠然と空を連想した。
『私』にとっての空は、そんなイメージなのかもしれない。いや、『今の私にとっては』か。
何もかもを隠し、でも本当は何も無い。そんな寂しい色。
どこまでも、どこまでも―

沈殿していたイメージは無い。
だから意識が浮上した感覚も無い。
右手にはキラキラと光に帰ってゆく”指示書”。
赤錆を連想させる大地を、同じく赤焼けに焼けた空から見下ろす。
そこには白亜の砦。今は所々に焼け焦げた痕の残る、幻影騎士団の砦。
その屋上で1人の・・・いや、一体が半分になったモノが慟哭する。
「あああああああああ!!!!痛いっ!感覚を遮断した筈なのに痛い!なんだ・・・・この痛みは・・・・そして・・・なんだこの液体はああああああ!!!!!!」
顔を半分削ぎ取られ、体はボロ布のマントのみになったロキが、残った目から”液体”を流す。
その目の前には・・・・人一人分の・・・・残骸。
「オレはこいつを知っていた?馬鹿な。会った事も・・・見た事も・・・ぐぅ!!」
半分になった頭を半分になった片手で覆う。
「知っていた・・・いや・・・知っている・・・!?でも・・・わからない・・・・」
その残った目から零れる”液体”を拭われもせず、残骸に降り続ける。
だからそっと耳に呟く。
『ノム3』と。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ロキはその場所から消えた。
残るのはノム3の残骸のみ。
その残骸を左手で一掴みする。
「・・・・・・・・・・・・ノム君・・・・・・・・」
それは持って行く事にした。
どんな物でも、遺体には代わり無いのだから。
右手に握った紙が、殆ど光の砂になって消える。
けれど、そこに書いてあった文字の意味だけは消えない。

「私は、やるべき事を成す」
助け出すのがお姫様じゃないのは、この際ご愛嬌だっ!!
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COMMENT TO THIS ENTRY
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更新はやいですなw
今回も楽しませていただきましたよ!
悪の司祭バージルにフイタww

追:サイコまで読。裏の裏があってトリックがなかなか詠みきれないとです。

- from バジル -

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見事だ・・・!

- from ロキ -

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幻影やミラージュでてるから、すごく読みやすいよねー♪

- from オクサマ -

--うむっ--

>悪の司祭
読むの早いなw
「零崎双識の人間試験」は人喰いの後くらいに読むとよろし。
まだまだがんばって書くぜー!!

>弟者。
早くネット繋いでメッセしてぇな・・・。
こっちの更新のが多くなりそうだw

>オクサマ
いやー、楽しんで読んでもらえたら幸いです。
めそっちとねちゃんは東方戦線に派兵中って設定だから本編で書けない・・・・からこっちで書くのだ!!

- from わらら -

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ヒトクイの前にマリ見て小説読んでるw
ロサ・カニーナまで読。

- from バジル -

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